万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年10月14日

高橋正衛 『二・二六事件 「昭和維新」の思想と行動 増補改版』 (中公新書)

Filed under: 近代日本 — 万年初心者 @ 06:00

数ヶ月前、中公新書が2000点を突破した記念に、『中公新書の森 2000点のヴィリジアン』という無料小冊子が出されました。

そこで識者へのアンケートとして、中公新書の中から推薦するものを一人三冊まで選ぶというコーナーがあり、本書が一、二を争うほどの票数を得ていた。

保阪正康、松本健一、半藤一利の各氏が名を挙げているので、これは一度読んでみようと思いました。

初版は相当古く1965年、94年に増補改版。

著者はみすず書房の編集者で、現代史史料関係の刊行に長年携わった人のようです。

1章から3章までが事件の経過と当時の報道、4章が事件前のクーデタ計画・暗殺行為の概説、5章が陸軍内の皇道派と統制派双方の思想的背景、6章が天皇機関説と青年将校の思想との関係、7章が軍法会議、8章が処刑の描写という構成。

この事件についての教科書的知識だけ確認すると、勃発したのが1936年、満州事変の五年後、五・一五事件の四年後、日中戦争の一年前。

陸軍の青年将校に率いられた部隊が首相官邸などを襲撃、首相の岡田啓介は難を免れたものの、斉藤実内大臣(内務大臣に非ず・前首相)、高橋是清蔵相、渡辺錠太郎陸軍教育総監(教育総監は陸相・参謀総長と並ぶ陸軍三長官)が死亡、鈴木貫太郎侍従長(終戦時の首相)は重傷を負う。

事件を受けての対応において、反乱軍への同調派が真崎甚三郎、荒木貞夫両陸軍大将、断乎鎮圧派が陸軍参謀本部の杉山元参謀次長(当時の参謀総長は皇族の閑院宮載仁元帥で病気療養中だったため、実質総長)、石原莞爾作戦部長、および海軍(岡田・斉藤・鈴木の三人とも海軍大将)、この両者の中間派で揺れ動いたのが川島義之陸相。

結局反乱は鎮圧され、皇道派人脈は一掃、事件後成立した広田内閣で軍部大臣現役武官制が復活し、以後統制派陸軍軍人による国政の壟断が甚だしくなる。

本書の評価を率直に言うと、あんまりいいとは思いません。

事件自体の描写はそれほどわかりやすくなく、全くの初心者向きだとは思えない。

5章の皇道派と統制派(この両派の名称は本書ではほとんど使用されないが)の解説はまあまあ面白く、ここが本書の一番有益な部分か。

事件がその後の政治に及ぼした影響を詳細に書いて欲しかったのだが、そうした叙述はほとんどない。

初心者がこれだけ読んで、何から何まで理解するのは難しい。

一通りのことは頭に入るが、期待したほどでもなかったなあというのが正直なところ。

読んで損したとは思いませんでしたが。

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