万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年10月6日

岩間陽子 『ドイツ再軍備』 (中公叢書)

Filed under: ドイツ, 国際関係・外交 — 万年初心者 @ 06:00

ドイツ再統一から三年後、1993年刊。

著者は京都大学法学部出身で、高坂正堯先生の弟子。

カテゴリはドイツではなく、国際関係・外交にします(追記:やはりタイトルに「ドイツ」とあるのに入れないのは妙な気がするので、「ドイツ」カテゴリにも入れました)。

1945年のドイツ敗北から1954年のパリ協定締結、翌年の協定発効・西ドイツ主権回復とNATO加盟までを扱った国際関係史。

冒頭、西ドイツの反共意識の原点となった、ソ連兵による性暴力のかなりえぐい描写がありますので、心臓の弱い方はご注意。

戦後の米ソ対立によって1949年東西ドイツが分立、同年NATO結成。

1950年朝鮮戦争勃発で東側軍事力への懸念がアメリカと西欧諸国の間で高まり、西ドイツの軍事的貢献を求める意見が出る。

しかしフランスを中心にドイツの潜在的脅威に対する恐れも依然広く持たれており、ソ連に対抗すると同時にドイツの脅威も顕在化させない「二重の封じ込め」を意図して、ヨーロッパ防衛共同体(EDC)という超国家的統一欧州軍構想(プレヴァン・プラン)が提出される。

西ドイツ単独の軍備を許容するのではなく、この機構の中に西ドイツを制約付きのジュニア・パートナーとして組み込む構想であった。

しかし西ドイツでは、再軍備自体と52年に最晩年のスターリンが行った、必ずしも宣伝・攪乱目的とは断定できないドイツ統一に関する交渉の提案に対する賛否をめぐって、国内対立が起きる。

ドイツの西側同盟への組み込みを最優先するキリスト教民主同盟(CDU)右派指導者で首相のアデナウアーに対し、いずれも強い反共信念を持ちながらソ連との交渉の道を閉ざさないことを主張したCDU左派のヤコブ・カイザー、グスタフ・ハイネマン、社会民主党(SPD)党首クルト・シューマッハー、西ベルリン市長エルンスト・ロイターが対峙する。

結局1954年フランス議会が批准を拒否したことにより、EDC構想は挫折する。

(当時のフランス首相はインドシナ戦争のディエン・ビエン・フーでの敗北を期に就任したマンデス・フランス。アデナウアーは彼がソ連と「中立・非武装のドイツ」を材料に取り引きをする意図があったのではないかと強い疑念を抱いていたそうだが、著者はそれを否定している。)

同年、48年に締結されていた西欧連合(WEU)条約(ブリュッセル条約)に西ドイツを加盟させ、それにおいて西ドイツの軍備管理と制限を課すという条件で同国の主権回復とNATO加盟を容認するという妥協案が、第二次チャーチル政権の外相イーデンから提出され、事態はその通り進展し、パリ協定が締結される。

翌55年に協定が発効し、56年に西ドイツで一般兵役義務法が可決される。

以上が大体のあらすじです。

これはかなり面白い。

冷戦初期の非常に重要な時期についての外交史としては相当の名著。

西ドイツ国内の諸勢力の主張、米・英・仏・ソ・その他諸国の立場が非常に明解に説明されており、すっきりと理解できる。

『アデナウアー回顧録 1』『同 2』と併読すれば効果大。

高坂先生の『現代の国際政治』あたりの戦後国際政治史概説を一冊読んだら、是非取り組むことをお勧めします。

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