万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年6月14日

中西寛 『国際政治とは何か 地球社会における人間と秩序』 (中公新書)

Filed under: 国際関係・外交 — 万年初心者 @ 06:00

高坂正堯氏の弟子である著者が、高坂氏の『国際政治 恐怖と希望』(中公新書)を導き手にして書き下ろしたもの。

第一章で近代の国際政治史の展開を概説した後、国際政治を力の体系・利益の体系・価値の体系の三つの面から考察した高坂氏著に倣って、安全保障・国際経済・価値意識について、それぞれ一章を割いて論じている。

高坂氏の『国際政治』のように、モノの考え方を引っくり返されるような衝撃と感動こそ無いものの、多彩な論点と興味深い視野を与えてくれる本。

各章末の参考文献と、巻末の文献案内は、数は少ないが、精選された定番の良書が紹介されていて非常に良い。

なかなかの内容を持っていると思いますので、機会があれば一読しておくのも悪くないでしょう。

・・・・民主制は自らを善玉と捉える道徳的自己義認の傾向をもっている。民主制が善玉-悪玉観のような単純化の危険をもつことを認識していたことが、カントがわざわざ共和制と民主制を区別し、前者を望ましい体制としたことの一つの理由であると考えられる。

カントは、世論が外交に反映されることで主権者が気まぐれな戦争を行いにくくなることを指摘したが、他方で、国民自身が主権者となる民主制は、制約要因をもたず、いったん世論が過熱すると見境がなくなる点を指摘し、国家の意志決定者と実行者とが分離されている共和制が最善であるとしたのである。

代表制をとり、また多元的な社会の基盤をもつ今日の自由民主主義体制はカントの共和制に近いものと見なすことはできるが、それでも自己の正当性を強く信じる時、民主制は好戦的なものになりうることは認識されるべきである。

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