万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年5月4日

引用文(ショーペンハウアー2)

Filed under: 引用文 — 万年初心者 @ 06:00

『ショーペンハウアー全集13』(白水社)、「法学と政治によせて」より。

リンネの人為的な恣意的に選ばれた植物体系を自然の体系でとりかえることはできない。たとえ自然の体系がどれだけ理性にかなっていようとも、またじつにしばしばそういう体系がこころみられたにしても、それはできないのである。というのは、自然の体系には、恣意的・人為的体系のそなえているあの概念規定のしっかりした確実さがないからである。同様に、右に示唆したような憲法の人為的・恣意的基礎を純粋に自然的な基礎でとりかえることはできない。自然的基礎は上述の諸制約を非難して、生得の特権のかわりに人格的価値こそ特権をもつべきだとし、国教のかわりに理性的探究の成果をすえようなどとするものだ。こうした言いぶんがどんなに理性にかなっていようとも、そこには国家共同体の安定性を確保する、あの諸規定の確実さが欠けているのである。たんに抽象的な法だけが具体化されているような憲法は、立派は立派でも、なにか人間以外の存在のためのものであろう。というのは人間の大多数は、きわめて利己主義的で不正であり、思いやりもなければ嘘もつき、ときには邪悪でさえあり、知性などろくにそなえていないからだ。さてこそ一身に権力を集中した人間、法や規則に超然としてなんの責任ももたぬ権威、すべてのものがそれに屈服する権力、いちだんと高い存在とみなされる、いわゆる天佑を保全せる支配者が必要になってくるわけだ。こうしてはじめて、人類は長期にわたって制御・支配されうるのである。

これに反して、北アメリカの合衆国では、こうした恣意的基礎をすべて完全に排除して処理しようとする試み、すなわちまったく混ぜもののない、純粋・抽象的な法を施行しようとする試みがなされている。しかしその成果がかんばしくないのだ。というのは、この国は物質的には繁栄しているにもかかわらず、低劣な功利主義が支配的志操としてのさばっており、これにかならずつきまとう相棒の無知が、英国教会的な偏狭な頑信、おろかなうぬぼれ、ばかばかしい女性崇拝と組んだ残忍な粗暴さといったもののお先棒をかついでいるのである。さらにもっと始末のわるいことが一般的に行なわれている。すなわち、罰あたりな黒人奴隷制、奴隷に対する極端な残酷、自由な黒人に対する不法な抑圧、リンチ法、頻発するにもかかわらずしばしば処罰されないで終わる暗殺、ひどく残忍な決闘、ときには公然たる法の無視、公債の支払い拒絶、詐欺同然の腹立たしいくらいの隣接した州の政治的接収、その結果として起こる富める隣国への貪欲な掠奪行、それをまた最高の筋が、その国のだれもが嘘と知っていて笑っているような出まかせで弁解すること、いよいよ高まってゆく衆愚政治、右に述べたような上層部の法の無視が一般の道徳性に及ぼす結果としての堕落といったことどもである。

広告

WordPress.com Blog.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。