万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年5月1日

ジョルジュ・カステラン 『ルーマニア史』 (白水社 文庫クセジュ)

Filed under: 東欧・北欧 — 万年初心者 @ 06:00

さして気乗りしないが、類書が少ないこれを読んでみました。

この国に関して一般常識として知っておくべきことと言えば、位置関係はもちろんとして、非スラヴ系のラテン民族だということ、国土が主にワラキア、モルドヴァ、トランシルヴァニアの三つに分かれること、トランシルヴァニアは長年ハンガリーの支配下に置かれ、モルドヴァの北部ベッサラビアもロシアに奪われ、この両国との緊張関係が絶えなかったことくらいですか。

(ソ連崩壊後に独立したモルドヴァ共和国というのはこのベッサラビアを領土とする国のようです。)

あと意外な盲点として、ヨーロッパでは珍しい産油国ということでしょうか(今もそうかはわかりません)。

二度の大戦でも地理的位置の他、石油という貴重な戦略物資供給国としても重視されたようです。

モンゴル人侵攻後、14世紀に成立したワラキア、モルドヴァ両公国がオスマン朝に貢納し、従属国となる。

1859年地元貴族出身者のアレクサンドル・クザ公の下、両公国が合同。

1866年クザが追放され、ホーエンツォレルン・ジグマリンゲン家より迎えられたカロル1世即位。

高校世界史では、1878年ベルリン会議でセルビア・モンテネグロと共に独立ということになっていて、国際的に承認された完全独立としてはそれで間違いないが、実質的にはその以前から独立の色彩が濃い。

第一次大戦では、王家の出身と反露感情から同盟国派も少なくなかったが、結局協商国側に参戦。

戦後はトランシルヴァニアとベッサラビアを手に入れ大ルーマニアが成立。

1930年代ファシスト団体「鉄衛団」が台頭。

1940年アントネスク将軍の独裁。

この人は普通、東欧の小ファシストといった扱いだが、鉄衛団支持一辺倒ではなく、むしろこれをドイツの黙認の下、弾圧している。

この辺はちょっと前に長谷川公昭『ファシスト群像』(中公新書)で読んだところだが、もう忘れかけていた。

独ソ戦に参加するが、ソ連の反攻を受けて枢軸陣営から離脱。

ソ連の圧力の下、人民民主主義体制が確立、共産党独裁下に置かれる。

初代指導者のゲオルギュ・デジがスターリン批判の波も乗り越えて1965年の死に至るまでその地位を維持し、その後をニコラエ・チャウシェスクが継いで1989年の体制崩壊で銃殺されるまで政権担当者だったので、実質的に戦後の政治指導者は二人しかいなくて覚えるのが楽。

もっと細かいメモを作るつもりだったんですが、疲れたので止めます。

以上のように省きに省いた抜け殻みたいなメモも書くのが面倒臭い。

マイナー分野の貴重な本ではあるが、あまり面白くはない。

140ページ程と薄いのでさほどの労力も要らずに通読できるが、その分頭に残らない。

淡々とした事実の描写が続くだけで、強い印象を受けることもない。

期待したほどではなかったです。

中公新書の『物語ルーマニアの歴史』が早く出ないかなあとつくづく思いました。

ただし、くれぐれも著者を慎重に選んで、「人物を中心にした物語風叙述を用いた基礎的な政治史の素描」というコンセプトに合うように執筆してもらうよう、編集者は最大限神経を使ってもらいたいです。

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