万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年4月6日

ヘルマン・グラーザー 『ドイツ第三帝国』 (中公文庫)

Filed under: ドイツ — 万年初心者 @ 06:00

去年11月の新刊。

この著者名はどこかで見た覚えがあるなあと思って巻末を見ると、本作品は社会思想社の現代教養文庫『ヒトラーとナチス』を改題したものですとの記述が。

今は亡き社会思想社の教養文庫。懐かしいですね。

あまり良質とは言えない、すぐ茶色く変色する紙質の古びた文庫装丁を今でも思い出します。

世界史関係の書物も割と収録されていたのですが、ほとんど読まないうちに会社が潰れてしまいました。

「世界の歴史」シリーズも刊行していて、中国史と西欧史中心で物語風叙述方式の昔ながらの世界史全集といった風情でしたね。

本書もその存在は知っており、いつかは読もうと思っていたもの。

こういう絶版となった渋い本をさりげなく文庫化してくれるのはさすが中央公論といった感じ。

高島俊男氏が『独断!中国関係名著案内』(東方書店)で、書店の文庫コーナーで中公文庫の棚だけ輝いて見える、中公文庫編集部には大変な慧眼の士がいるに違いないと書いてらしたのに全く同感の意を抱いたことを思い出します。

ただ、バブルの頃、もうちょっと手堅い商売をしておいてくれれば、現在のように品切本を続出させたり、読売傘下に入ることもなかったんですが・・・・・・。

時間を90年代初頭くらいに戻して欲しい。

閑話休題。

本書は全5章の構成で、そのうち一般的な通史的記述は第1章のみであり、それも非常に簡略化されたもの。

以後、世界観・宣伝機構・文化政策・テロ支配というテーマごとに一章を割いて記述されている。

本文の後に一段小さめの活字で、当時の新聞・雑誌・書籍・演説からの引用が載せられており、分量的には本文に匹敵するほど。

よって、全くの初心者が基礎を固めるための概説という性質は希薄で、具体的歴史事例に触れることでイメージをつかむための本といったところか。

悪くはないし、教科書レベルの次に読もうとして読めない本ではないが、親切丁寧な入門書という感じではない。

(その分、深く考えさせられる引用文が数箇所あるんですが。)

何か別の本で基礎知識を得て、それから本書に取り掛かり、次にハフナー『ヒトラーとは何か』(草思社)で目から鱗を落とすというのが、なかなかいいコースだと思います。

以下、第三帝国時代、体制反対者によって広められたゴットフリート・ケラーの詩。

毒虫がほこりと

乾いた泥の中に、

軽い灰の中の焔のように

じっとかくれている。

雨と微風に

悪しき生命は目覚め

無から悪疫、

熱と煙が立ち上がる。

暗いほら穴から盗賊が

徘徊しようと立ちあらわれる。

獲物を求めようとして、

もっとよいものを見つける。

無意味な争いと

惑える知識と

ちぎれた旗と

愚かな民衆とを。

その行くところ、必ず

貧しき時代の空虚に会い、

厚顔無恥に歩み得て、

かくて盗賊は予言者となる。

塵芥の山に

悪の足ふみしめ、

呆れ顔の世間に

舌を鳴らしてあいさつする。

雲に包まれるように

卑劣に身を包み、

民衆の前の虚言者は

やがて巨大な権力をつかむ。

これに従う手下あまた。

位の高きも低きも、

機をうかがいつつ

頭にとり入ろうとする。

彼らは頭の言葉を、

かつて神の使徒が

五個のパンでしたように広め、

それは汚ならしくはびこってゆく。

はじめはかの犬めが欺いただけなのに

今は彼ら数千がそろって欺く。

嵐がふきまくるように、

今、彼の才は時を得て肥えふとる。

蒔いた種は高く伸び

国の姿は変りはて、

民は恥辱の生を生き

下劣な行いを意に介しない。

はじめはでたらめと思ったことが、

今や現実と化した。

よき人々は姿を消し

悪しき人々が群がっている。

いつかこの苦難が

遠く氷のようにとけたとき、

黒死病のように

語られることだろう。

子らは野に出て

藁人形をつくり、

苦しみを焼いて楽しみとし、

古き恐怖を焼いて光としよう。

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