万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年3月18日

高橋裕史 『イエズス会の世界戦略』 (講談社選書メチエ)

Filed under: スペイン — 万年初心者 @ 06:00

最初、カテゴリはイタリアにしようと思っていたのですが、読んでみるとスペインの方が適当かなと感じましたので、そうします。

イエズス会の海外布教のうち、特にインドと日本での活動に焦点を当て、その組織と情報網、世俗国家との関係、経済的基盤、異教文化への対応、布教のための軍事力への態度などの側面を叙述したもの。

イエズス会の起源と展開全般について、広く浅く、わかりやすく平易に説明してくれる本なら良かったのだが、残念ながらそういう著作ではない。

書き下ろしに混じって、学会誌への論文や大学での集中講義ノートなどを元にした章があり、煩瑣で退屈な部分もある。

1494年のトルデシリャス条約でアフリカからインド・東南アジア・中国・日本はポルトガルの進出地域と定められたので、この地域へのイエズス会の布教はポルトガル王国との緊密な協力の下に進められることになる(1580年フェリペ2世によるポルトガル併合後はスペインと)。

財源として、ポルトガル王室からの給付金の他、不動産保有や貿易斡旋など会自身が行なう経済活動からの利潤があり、こうした世俗的活動はしばしば内外の批判にさらされる。

この経済関係の章は、やたら細かな事例が長々と出てくるので参る。

その一つ前の、異文化と布教活動との衝突・妥協を扱った章は読む前は面白そうだなあと思っていたが、実際読むと比較文化論みたいな文章はほんのわずかで、日本イエズス会の組織関係の話が多く、はっきり言って期待ハズレ。

ちなみにイエズス会の日本教区は、京都を中心にした都地区・長崎などの下地区・豊後地区の三つに分かれていたそうで、何か妙な分け方のように思えるが、日本の中心としてのミヤコとキリシタン大名の大村純忠が長崎を寄進した下地区、同じく有力キリシタン大名大友宗麟の領地の豊後と考えれば得心が行く。

最後の軍事に関する章はまあ一番面白い。

異教徒の攻撃・迫害に対する正当防衛としての武力を認める立場から、キリシタン大名への軍事援助に始まり、後には会自身の武装化や重要拠点長崎の要塞化が行なわれる。

一方、「キリスト教勢力による日本征服」への日本人の怖れが布教の妨げになっていることも理解されており、日本国内での戦乱への介入を戒める指令が日本イエズス会やローマ本部から出されている。

しかし豊臣秀吉の迫害を期に、「教会過激派」の宣教師たちの間には対日武力征服と武力総改宗論が燻ぶり続けることになる。

叙述対象としてやや特殊な事項が取り上げられていて、イエズス会全般の歴史を知るには少し不適当な印象を受ける。

初心者にとっては使いにくい本。

読むのならば、細かなことは拘らず、布教活動の大体の雰囲気や概略がわかればよいと構えた方がいいでしょう。

そうじゃないと、さほど長い本ではないとは言え、挫折しかねない。

必読、とまではやはり言えませんねえ。

余裕があればお読み下さいといった感じです。

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