万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年3月13日

徐大粛 『金日成と金正日 (現代アジアの肖像6)』 (岩波書店)

Filed under: 朝鮮 — 万年初心者 @ 06:00

金日成が死んで二年後、1996年に出たもの。

2002年の日朝首脳会談前で、岩波刊でこの人物とくれば、同じシリーズの『ホー・チ・ミン』以上に、何かとんでもなく偏った内容なのではと危惧したくなりますが、そのような心配は本書についても杞憂です。

著者は戦後米国に移住した韓国人学者でハワイ大学教授。

金日成の満州での抗日運動が戦後「革命神話」の域に達するまで誇張されたとしながらも、いわゆる「金日成偽者説」は採らず、独立闘争において確たる実績があったことを認めている。

また建国後の行動では、朝鮮戦争開戦という誤った判断をした責任を問いながら、中ソ対立の狭間で自主路線を確立したことは評価し、しかし硬直的な個人独裁体制と権力世襲は非難するといったスタンス。

批判的姿勢は保ちながらも、極端な罵倒や攻撃を避け、南北朝鮮を出来る限り公平な立場でみようとしている。

本来、こういう冷静なアプローチは、他の国や指導者に対してなら大いに共感するところなのだが、本書については頂けない。

この親子に対しては嫌悪と軽蔑以外の感情を持つことが極めて難しい。

彼らが作った体制もその異常性と残虐さにおいて、他の共産主義国からずば抜けている。

日本人拉致があったからというだけではなく、それ以外でも正気の沙汰とは思えない事実が洩れ聞えてくる。

90年代初頭、大学に入った辺りで、金元祚『凍土の共和国』(亜紀書房)とか全富億『金日成・正日の北朝鮮』(日新報道)、李佑泓『どん底の共和国』(亜紀書房)、月刊朝鮮編『北朝鮮その衝撃の実像』(講談社)、黄民基『金日成調書』(光文社)などを読んで、「一体何なんだ、この国は・・・・・」と唖然としたのを覚えている。

とにかく、同じ共産圏の指導者でも、周恩来、胡耀邦、ホー・チ・ミン、チトー、カストロなどと比べると人品に差があり過ぎる。

おまけに無駄に長生きし過ぎ。

1945年ソ連軍によって指導者に選ばれた時に若干33歳ですからねえ・・・・・。

スターリン批判と非毛沢東化を見た上で、死後も自己絶対化を永続させるために息子を後継者に準備するだけの時間的余裕を得てしまった。

中ソ対立も利用して自主路線を打ち立てたことは本書でも評価されているが、逆に言えばソ連の非スターリン化や中国の改革開放の流れに乗り遅れたとも言える。

朝鮮人の不幸と周辺国民の迷惑を考えると、こんなたわいもないことでも言いたくなる。

悪書だとか、読んでも無駄などとは決して言いませんが、特に勧めたくなる本でもありませんでした。

ちなみに、この岩波の「現代アジアの肖像」シリーズも結構読んでますが、全15巻のうち、李鍾元『7 李承晩と朴正熙』と藤原帰一『12 マルコス』は結局出なかったようですね。

特に後者は是非読んでみたかった気がする。

藤原先生もよくメディアでお見かけしますし、お忙しい方なんでしょうが、できれば刊行して頂きたかったなあと思いました。

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