万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年2月25日

長谷川公昭 『ファシスト群像』 (中公新書)

Filed under: 近現代概説 — 万年初心者 @ 06:00

1982年刊で存在自体は前から知っていたこれを通読。

ドイツ・イタリア以外のヨーロッパのファッショ的あるいは権威主義的指導者の系譜をざっと概観する本。

1章と2章はフランスで、シャルル・モーラスとレオン・ドーデの「アクション・フランセーズ」を始めとする右翼・ファシスト団体の紹介。

まあ特にどうってことない記述。

このうち、ド・ラ・ロック大佐率いる「火の十字架団」に関しては、去年出た剣持久木『記憶の中のファシズム』(講談社選書メチエ)でかなり詳しく触れられているようですが、私は未読。

この辺の記述に興味があれば、福田和也『奇妙な廃墟』(ちくま学芸文庫)を精読されると良いと思います。

第3章は西欧・南欧の章で、フランコ、サラザールという大物から、プリモ・デ・リベラ(スペイン、ミゲールとホセ・アントニオの親子)、ドルフス(オーストリア)、ザイス・インクヴァルト(オーストリア)、クヴィスリング(ノルウェー)といったそこそこの有名人、ドグレル(ベルギー)やムッセルト(オランダ)みたいに「誰ですか、それ?」という人物が記述される。

まあ、普通。

第4章は東欧諸国で、この章が本書では一番役に立つのではないでしょうか。

本書程度の、各国のごく簡略な通史でも類書が少ないので、初心者にはかなり有益。

独伊に盲従する「真性ファッショ」と、右翼権威主義的政権との間の微妙な協力と対立の経緯が読んでいくと結構面白い。

ハンガリーのホルティ、スロヴァキアのティソ、ルーマニアのアントネスク、ギリシアのメタクサスなどがその種の指導者。

最後の第5章は英米の親ファッショ団体の記述。

あんまり面白くもないし、まあこんなもんかと軽く流せばよいかと。

ここに載ってる指導者で名前を知っていたのはイギリスのモーズリくらいですか。

あとチャールズ・リンドバーグも参加した「アメリカ・ファースト委員会」は聞いたことがありました。

しかしかなりのページを割いて述べられている同じアメリカのカフリン神父なんて、全然知りませんでしたね。

まあこれも読みやすくはあるが、さほどの面白さは無い。

一日、二日で読めるので損した気分は無いが、非常に多くのものを得られるというわけではない。

史的評価の基準として、ファシズム・ナチズムと右派的権威主義との区別を一応はつけていると思われるが、いまいち明確ではなく、それがやや平板な印象を与える。

結論を言えば、ごく普通の読後感でした。

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