万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年2月9日

松谷健二 『カルタゴ興亡史』 (中公文庫)

Filed under: ローマ — 万年初心者 @ 06:00

『ヴァンダル興亡史』および『東ゴート興亡史』と同じ著者。

本書も上記二作品と同じく、古き良き講談風史書といった風情がある。

語り口が非常に巧みで、史料や参考文献から難解な部分を取り除き、興味を絶やさない形式に再構成した上で、平易かつ読んで面白い歴史物語に仕上げて読者に提供してくれる。

そういう著者の手さばきは大変良いと思うのだが、フェニキア人の都市テュロスの植民に始まるカルタゴ建国から第一次ポエニ戦争までの前半部分は、やや退屈。

ハンニバル戦争以後は扱われている史書も多いし、この前半部の方が貴重なはずだが、個人的にはあんまり面白いと思わなかった。

これは著者の責任でも何でもないが、登場人物がハンノとかハスドルバルとかハミルカルとか、同じ名前を持つものが多すぎて頭が混乱する。

ただ同名異人が少なくても、カルタゴ史ではハンニバルという巨人の存在が大きすぎるので、他の人物の影が薄くなるのはやむを得ぬところか。

シュラクサイを中心とする、シチリアのギリシア人勢力との長年の抗争と、それへのローマの介入について詳細に書かれているので、それはなかなか有益。

後半部のハンニバルの活躍はやはり非常に面白い。

しかし、この辺の歴史については、塩野ローマ史の『ハンニバル戦記』という初心者向けの傑作啓蒙書がありますからねえ・・・・・・。

短いので二日もあれば余裕で読めます。

悪い意味での学者的な衒学趣味もなく、巧みな史話の語り部として、読者に応対してくれるのは非常に良いのですが、最初に挙げた二書に比べるとやや存在意義が薄れるかなというのが私の感想です。

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