万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年1月27日

ロデリック・ナッシュ グレゴリー・グレイヴズ 『人物アメリカ史 上』 (講談社学術文庫)

Filed under: アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

上・下巻に分かれてますが、とりあえず上巻のみ記事にします。

伝記を積み重ねて、ある国の通史を物語るという形式の本。

中公新書世界史関係の傑作藤沢道郎『物語イタリアの歴史』と同じタイプの本ですね。

この巻は植民地時代から南北戦争まで。

取り上げられている人物として、コロンブス、フランクリン、ジェファソンと誰でも知ってる有名人もいれは、テカムセとかキット・カーソンのように「誰、それ?」と言いたくなる人もいる。

(前者は19世紀初頭のインディアン部族連合の指導者、後者は西部の偶像となった探検家・開拓者。)

こういうマイナーな人物を含めた伝記でありながら、背景説明にも力を注ぎ、空白の無い通史として一応きちんと成り立たせているところは、かなりよく出来ていると思います。(上記の藤沢氏著ほどではありませんが。)

もともと本書は、アメリカの大学の学部授業で使用されることを想定した歴史教科書らしく、日本人が読んで煩瑣で読むに耐えないという部分は特に無かった。

史実の描写がものすごく面白いとか、鋭い史的解釈に蒙を啓かれる思いがするとか、そういうことはないが、標準的なアメリカ史テキストとして十分使える出来ではないでしょうか。

本書のうち、個人的に一番強い関心を持つのは末尾に載っている南軍のロバート・リー将軍の章。

前から思ってたんですが、このリー将軍というのは本当に立派な人ですね。

奴隷制度をはっきり悪と認識し、相続した自分の家の奴隷を、大きな経済的困難を抱えながら、彼らのために職探しまでした上で一人残らず解放。

南北戦争勃発にあたっては、北軍司令官への就任を要請されながら、悩みに悩んだ末、奴隷制擁護のためではなく、故郷ヴァージニアを守るために南軍に加わり、兵員・物量の圧倒的不利を背負いながら孤軍奮闘し、南部連合を支えるが、ついに力尽き降伏。

なお、ほんのわずかな記述だが、しかし私が一番感動した南北戦争後のエピソードが、本書ではなくアンドレ・モロワ『アメリカ史 上・下』(新潮文庫)に載っている。

農園主たちも、神の前では万人の平等を否定することはできなかった。それにもかかわらず、最初、リッチモンドの一黒人が、白人に混って聖餐拝受のために跪いた際、そのまわりにいた白人たちは身を退いた。この時、いつも変わらぬ威厳をもって、その黒人の傍らに立ってやったのは、他ならぬリー将軍であった。こうした先例ができたので、その後は他の人人も、これに倣うようになった。[下巻492~493ページより]

本書の筆致は必ずしも常にリーに対して好意的というわけではないのですが、個人的にはアレグザンダー・ハミルトン、ジョージ・ケナンと並んで、アメリカ史では最も好きな人物です。

上巻を読んだ限り、特に優れているというわけではないですが、大きな欠点は無いと思います。

ただ、500ページ超の分量は少々かなわない。

もうちょっとコンパクトならいいんですけどね。

近日中に下巻を読んでまた記事にします。

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