万年初心者のための世界史ブックガイド

2009年1月25日

引用文(高坂正堯1・岡崎久彦1)

Filed under: 引用文 — 万年初心者 @ 06:00

高坂正堯『世界史の中から考える』(新潮選書)、162ページより。

よく知られていることだが念のために書いておくと、戦前の日本では首相は“同輩のなかの第一人者”に過ぎなかったので、閣内不統一は内閣総辞職ということになった。それに陸海軍大臣は現役軍人でなくてはならぬきまりになっていたため、陸軍と海軍は大臣を出さないことで内閣をつぶすことができた。いわば拒否権を持っていたわけで、陸軍はそれを使って強大な政治力を築いた。

岡崎久彦『幣原喜重郎とその時代』(PHP文庫)、43ページより。

他方、この事件[大正政変―引用者註]を通じて、昭和になって軍閥の跳梁を許すこととなる明治憲法の不備もみえてきた。それは、明治憲法には「国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」とだけあって、総理の大臣任免権にも、内閣の連帯責任にもなんら触れるところがないことである。『憲法義解』によれば、これは意図的であり、閣僚が連帯の力で君権を制限することを恐れたためのようである。・・・・・

後年、統帥権独立論によって軍が、軍政あるいは国政全般に発言力をもつようになるが、これを可能にしたのは、国務大臣がそれぞれ独立して天皇に対して責任を負うというこの条文である。

ちなみに現行憲法では、「内閣は連帯責任を負い、国務大臣は総理が任命する」と明記しているので、たとえ軍がいかに強くなっても、そのような事態が起こる可能性はまったく排除されている。現行憲法は、外国の占領下で日本の国家と国民の意思が自由に独立して表明されることが許されなかった環境の下に制定されたという根源的な欠点を有することは否定しがたいが、この点については、明治憲法の不備を正している。

軍部大臣現役武官制とその弊害についてはもちろん知っていたが、その前提である戦前の内閣の性格について、これだけ重要なことを私は中学・高校の歴史の授業で習った記憶が無い。

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