万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年12月31日

油井大三郎 古田元夫 『第二次世界大戦から米ソ対立へ (世界の歴史28)』 (中央公論社)

Filed under: 全集, 国際関係・外交 — 万年初心者 @ 06:00

1939年第二次世界大戦開戦から1960年代初頭辺りまでが対象範囲。

ただし終章のヴェトナム戦争の項は1975年の戦争終結まで扱われている。

本書のように1945年で区切らずその前後を通して記述するというのは、最近の本では珍しくないんですかね?

私の場合、感覚が古いせいか、何か違和感があるんですが。

叙述の質自体はまたもや普通です。

取り立てて言うべき長所も無いかわり、大きな欠点も無いといった感じ。

戦中期を扱った前半より、戦後期の後半の方がやや面白いが、話があちこちに飛ぶので、年代をある程度把握していない人は少し混乱するのではないかと思った。

個々の記述では興味深い点があるのに(例えば古田氏[『ホー・チミン』(岩波書店)の著者]が書いたヴェトナム戦争史など)、少々まとまりに欠けるという印象を与えるのが残念。

戦後の国際政治史はわりと得意なので(あくまで他の分野に比べればの話ですが)、やや物足りないし、もうちょっと明解で突っ込んだ記述にならないものかなあと思ってしまった。

以下、瑣末な事項ばかりですが、個人的にメモしておきたいことの羅列です。

1943年ムッソリーニ失脚後のバドリオ政権に対し、自由党・キリスト教民主党・共産党・社会党などレジスタンス勢力の国民解放委員会は一時不承認政策を取り、ムッソリーニが北部で組織した「イタリア社会共和国」と並んで三つの政治勢力が分立した状態になる。

44年3月にモスクワと共産党指導者トリアッティが統一戦線方式を提唱して、バドリオ政権が国民解放委員会代表を含む形で改組された。

6月に米英軍がローマを占領し、国民解放委員会主導のボノーミ政権樹立。

(この辺の経緯はロマノ・ヴルピッタ『ムッソリーニ』(中央公論新社)に載っているはずだが、ほぼ忘れていた。)

インドネシアの対蘭独立戦争の最中、1948年9月元首相のシャリフディンと共産党指導者のムソが率いる左派系組織「人民民主戦線」が、ジャワ島東部マディウンでスカルノ率いる中央政府に対して反乱を起こす。

このマディウン蜂起は中央政府に鎮圧されるが、これがアメリカにインドネシア独立運動の「容共性」の疑念を晴らすという意外な働きをし、その後国連で独立支持の決議が採択され、49年12月のハーグ協定で独立承認となる。

なお1948年にはマラヤ・ビルマ・フィリピンなど他のアジア地域でも共産党が他の民族主義勢力から離れて武装闘争路線に入ったが、これについて2月インドのカルカッタで開かれた共産党系の青年組織会議でソ連からの指令があったとの説が有力で、そういう話は高坂正堯『現代の国際政治』(講談社学術文庫)はじめ、いろいろな本に出てくる。

同48年のチェコ・クーデタ、ユーゴスラヴィアのコミンフォルム追放、ベルリン封鎖などと連携したソ連の攻勢の一環と思われるが、本書では「最近では、この説の信憑性は疑われている」としているが、論拠が書いてない。

ソ連崩壊後の文書公開でもその手の指令が見つからなかったとか、そういうことでしょうか?

インドネシアとは対照的に対仏闘争を行うヴェトナム民主共和国を、アメリカは強い疑念を持って見ていた。

「自由タイ」勢力が政府を組織していたタイは一時フランス復帰に反対する北ヴェトナムに同情的でバンコクに代表部設置を許可していたが、47年ピブン派軍人のクーデタが起きると反共政策に舵を取り、関係が悪化(村嶋英治『ピブーン』(岩波書店)参照)。

1960年コンゴ動乱で一時分離独立したカタンガ州は南部にあることを確認。

ちょっと詳しい本ならこの地名は必ず出てくるのに、地図がなかなか載ってないんですよねえ。

後半部に入ると、新たな知識や視点を得ることができてなかなか良いです。

生意気な言い方ですが、このシリーズの平均点はクリアしてると思います。

さて、本年もこれで最後です。

年が明けても、もうしばらくの間、今くらいのペースで更新を続けたいと思っておりますので、よろしければお付き合い下さい。

それではよいお年を。

(追記:本記事もいつも通り午前6時に更新されるよう設定してあったのですが、昼前の時点で反映されていないようでしたので、手動で更新しました。以前もこういう現象がありましたので、しばらく更新時間が不規則になるかもしれません。)

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