万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年11月13日

堂目卓生 『アダム・スミス』 (中公新書)

Filed under: 思想・哲学 — 万年初心者 @ 06:00

高校生の頃、数学が全く出来ないのに、「将来経済学部に行こう」と考えていた時期があった。

それで、宇沢弘文『経済学の考え方』(岩波新書)や正村公宏『経済学の学び方』(講談社学術文庫)、佐和隆光『経済学とは何だろうか』(岩波新書)、および、全編漫画・イラスト入りの入門書である、ナガイ・ケイ『THE WORLDLY ECONOMISTS SERIES』(富士書房)のスミス、マルクス、ケインズ、サミュエルソン、フリードマン、ガルブレイスの巻などを読んだ。(高校の図書室にはサムエルソン『経済学』(岩波書店)も置いていたが、これは読めなかった。)

結局自分の適性からして経済学部は無理と悟ったので止めました。

上記の本は一般常識としての一番初歩的な経済学(史)を知る上で役に立ったと思うし、世界史読書の観点からもそこそこ有益だと考えますが、アダム・スミスの著作である『諸国民の富(国富論)』も『道徳感情論』も今となっては絶対読めないので、せめてこういう入門書でも読んで、簡略な知識を仕入れるつもりで手に取る。

両書の内容を噛み砕いてごく平明に解説した本。

まずあまり知られていない『道徳感情論』から始めて、スミスの人間観・社会観を探るのだが、ごく丁寧に基礎から説明して、くどく感じられるほど内容の再確認をしながら記述されているので、読み通すのに何の困難も無い。

『国富論』の部分に入っても同じ。

『国富論』が刊行されたのは、アメリカ独立宣言と同じ1776年だが、スミスのアメリカ植民地独立運動に対する評価と態度が詳しく記されており、なかなか面白い。

基本的に植民地の分離独立を支持するという立場なのだが、高坂正堯氏がどれかの本で、スミスはアメリカ独立を支持したが、ただしイギリスが独立派を軍事的に制圧した後、一方的に独立を付与するのが良いと考えていたとして、それはスミスが権力政治を良く理解していた証拠だと賞賛されていたのを思い出した。

ただ、本書ではその種の記述は見当たらない。

全体の論旨は、スミスは倫理的諸価値を軽視した「市場原理主義者」や「自由放任主義者」では全くなかったんですよ、ということかな・・・・・?

私の頭では上手くまとめられません。

さほど長くも無いし読みやすい本なので、ご自身でお確かめ下さい。

スミスは、イギリスへの統合によって、アメリカ植民地は党派抗争を避けることができると考えた。スミスは述べる。

「[アメリカ植民地は]グレート・ブリテンとの統合によって、幸福と平静の点で多くを得るだろう。それは、少なくとも、小規模の民主主義国と不可分のものである悪意と敵意に満ちた党派抗争から植民地を解放するであろう。この党派抗争は、これまで、しばしば人民の愛情を分断し、形態においては民主的なものに近い政府の平静を乱してきた。この種の統合によって阻止されなければ、グレート・ブリテンからの完全な分離が起こるだろうが、そうなれば、植民地の党派抗争はこれまでの十倍も激しくなるであろう。現在の動乱が始まる前は、本国がつねに強制的な力で、こうした党派抗争が、はなはだしい野蛮と侮辱を超えるほどのものになるのを防いできた。しかし、本国の強制的な力が完全に取り除かれてしまえば、党派抗争は、すぐにも激化して、公然たる暴力と流血へと発展するだろう」(『国富論』五編三章)。

スミスの予言どおり、アメリカは、独立してから党派抗争を激化させ、一八六一年、南北戦争という「公然たる暴力と流血」を引き起こすことになる。

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