万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年11月10日

高橋均 網野徹哉 『ラテンアメリカ文明の興亡 (世界の歴史18)』 (中央公論社)

Filed under: ラテン・アメリカ, 全集 — 万年初心者 @ 06:00

まず目次を見て、何か「あれっ」と思う。

読み始めると、その違和感の正体がわかった。

前半部に書かれている、スペイン人侵攻以前と植民地時代の歴史を通じて、メソアメリカ文明とアステカ王国は極めて簡略に済まされており、叙述の重点は常にアンデス文明とインカ帝国に置かれている。

執筆者である網野氏の専攻分野の関係なんでしょうが、これはちょっとアンバランスではないかと・・・・・。

しかし、本文の内容自体はかなり良い。

以前記事にした『インカ帝国の虚像と実像』よりも相当わかりやすい記述。

スペイン人の侵攻後は、一方的に虐待・搾取され、全く為す術なく衰亡していったという、アメリカ先住民の一般的イメージに反し、様々な手段を通じて植民者への抵抗・妥協を行い生き延びていった賢明な人々といった面でインディオを捉えている。

例えば、有名なポトシ銀山も、初期の段階ではインディオが主導権を持って開発されていたなんていう意外な事実が紹介されている。

後半部、高橋氏執筆の独立以後の章も非常に良くできている。

最初に大まかな時代区分を設定し、その根拠を説明した後、個々の史実のうち重要なものを拾っていくというわかりやすい形式。

それもただ事実を漫然と並べるだけでなく、必ず背景説明を伴って叙述されるのですが、これが非常に明解ですっきりと理解できる。

史実の意味付けがしっかりしており、記憶に残りやすい絶妙な叙述で、本当に感心させられました。

この巻は当たりです。

大当たり。

全集を読んでいくと、私の場合のラテン・アメリカのような手薄な分野にも自動的に補充されていくのが良いですね。

特に、この巻は全集を通読しようと決意した人でなくても、単独でラテン・アメリカ史の標準的概説として手に取る価値有りです。

最初に書いた対象地域の偏りだけが瑕疵ですが、それ以外は何の欠点も無い。

強くお勧め致します。

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