万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年11月7日

長谷川輝夫 大久保桂子 土肥恒之 『ヨーロッパ近世の開花 (世界の歴史17)』 (中央公論社)

Filed under: ヨーロッパ, 全集 — 万年初心者 @ 06:00

16世紀からフランス革命直前までの近世ヨーロッパ史概説(西欧だけでなく東欧・ロシアを含む)。

本巻著者のうち、長谷川氏は『聖なる王権ブルボン家』の、土肥氏は『よみがえるロマノフ家』の著者。

その二書と同じく、本書も非常に読みやすく整理された叙述で大変良い。

冒頭の宗教改革の説明からして明解でわかりやすい。

大久保氏の文章は初めて読みますが(ただし巻末の著者紹介を見るとジェフリ・パーカー『長篠合戦の世界史』の訳者らしい)、その担当であるスペイン・イギリス・オランダ史も手堅い作り。

後世の我々は、大英帝国に繋がる歴史を知っているので、イギリス史に特別の重要性を付与しがちだが、近世初頭においてイギリス(というか正確にはイングランド)はあくまで辺境の小国に過ぎなかったという視点を一貫させているのが特徴。

また、イングランドとケルト周縁(ウェールズ・スコットランド・アイルランド)との交流・軋轢を詳しく記しているのも興味深い。

いわゆる「絶対君主」「絶対王政」(最近では「新君主政」「ルネサンス国家」と言うそうですが)の歴史を主題としながらも、決して視野の狭い政治的事件史に堕していない。

極めてバランスの取れた叙述形式で、安心して読める。

最近の研究による定説の修正なども、難解にならない形でさり気無く触れられているのが親切。

同じヨーロッパ史概説でも、第10巻の中世ヨーロッパ史とは雲泥の差。

本書のような叙述なら何の抵抗も無しにスラスラ読める。

欠点としては、記述の質ではなく、量の面での粗さがある。

ピューリタン革命の経緯などは極めて簡略に済まされているように、テーマによっては軽く扱われ過ぎていると感じられる部分が多い。

そもそもページ数が足りない。

同じ著者と対象で、二巻費やして書いてくれれば、もっと素晴らしい本になったはず。

基本的には良書だと思いますが、手放しで絶賛というわけにもいかないなあというのが僭越ながら私の感想です。

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