万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年10月16日

石澤良昭 『アンコール・王たちの物語』 (NHKブックス)

Filed under: 東南アジア — 万年初心者 @ 06:00

前近代のカンボジア通史というのも、なかなか良いものがないなあと思っていたところ、これを見かけたので読んでみました。

「アンコール」とか「アンコール・ワット」とタイトルについている本だと、観光案内や美術史の記述ばかりだったりすることが多いですが、本書は一般の歴史書としての体裁を具えている。

各国王に触れる際、必ず彼らが築いた都城、寺院、バライ(国力の源である稲作用の巨大貯水池)について細々した説明がなされて、それがやや煩雑な印象を与えるが、そこら辺は軽く流して飛ばし読みでもいいでしょう。

まず紀元後1、2世紀に東南アジア最初の国家でもある扶南が成立。

6世紀末に真臘が成立。これが現在までのカンボジア国家の直接の起源とされているらしい。

ちなみに、この「真臘」って、高校世界史で出てくる歴史用語で多分一番書くのが難しい字でしょうね。

「薔薇戦争」はカタカナで書いてもOKでしょうから。

(それとも、エドワード6世の「一般祈禱(←祷の旧字)書」の方が難しいか?)

8世紀初めには北部の陸真臘と南部の水真臘に分裂。

ジャワのシャイレーンドラ朝(8世紀半ば~9世紀前半)が水真臘を影響下におく。

水真臘王族の一員だったジャヤヴァルマン2世が802年即位し、アンコール朝を樹立。

シャイレーンドラ朝の宗主権を否定、北征を行い国土統一。

宗教は土着信仰と混交したヒンドゥー教が主流。

仏教徒も存在したが、当時は現在と違って上座部仏教ではなく、大乗仏教だったらしい。

12世紀前半在位したスールヤヴァルマン2世がアンコール・ワット建設。

最初はヴィシュヌ派ヒンドゥー教寺院として建てられた。

恥ずかしながら、私はそういう基礎的知識からしてあやふやだった。

北宋および南宋に使節を派遣、李朝大越およびチャンパーと戦う。

1177年チャンパー軍がアンコールを急襲。

1181年ジャヤヴァルマン7世が即位、チャンパー軍を撃退。

都城アンコール・トム建設。

同王は個人としては大乗仏教徒だったが、国家儀礼は依然としてヒンドゥー教バラモンたちの手にあり、13世紀には反仏教運動が起こっている。

以後は衰退期となり、タイのアユタヤ朝(1350~1767年)に圧迫され、1431年頃アンコール都城は放棄され、1434年プノンペンへ遷都。

アンコール放棄によって普通アンコール朝の滅亡と見なされている模様。

他の多くの国王にも触れられており、巻末の「カンボジア古代・中世歴史年表」という非常に良くできた年表を見ながら復習すれば、歴代国王を暗記するのも不可能ではないと思われるが、とりあえず初心者は以上に挙げた3人の王名だけしっかり記憶すればいいでしょう。

内容はまあまあ。

アンコール朝以後からフランスによる保護国化までのカンボジア王国史やその時代の上座部仏教導入の経緯やらを書いてくれればもっと良かった。

ただ最初に書いたように、細かな建築・美術関係の記述はあまり拘らないで読めば、初心者にとっても有益な本だと思います。

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