万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年10月13日

佐藤彰一 池上俊一 『西ヨーロッパ世界の形成 (世界の歴史10)』 (中央公論社)

Filed under: ヨーロッパ, 全集 — 万年初心者 @ 06:00

目次見た瞬間、嫌な予感がしました。

中世ヨーロッパ史の巻ですが、全編通じて社会史・生活史・心性史で埋め尽くされている。

このシリーズでは多くの巻がそうですが、この巻ほど徹底されると唖然とする。

国家・民族を単位にして、支配階層が政治権力をめぐって惹き起こした事件のあれこれを叙述するだけの、視野の狭い通史はもはや書くべきではない、という意見には同意せざるを得ないが、本書のような記述は逆の極端に走っているように思えてならない。

とにかく、事件史的記述が何にも無い。

背景説明の一部以外で著名な歴史人物の名が出てくることもほとんど無い。

ここまでくるとある意味凄い。

文章はよく練られていて巧いと思うし、実際途中で挫折することなく、かなりのスピードで通読できた。

これは、しかし、細々した史実を他の本でマスターした人がざっと読んで視野を広げられる本であって、初心者が基礎固めのために読む本ではない。

旧版の掘米庸三『中世ヨーロッパ』も確かに社会史・生活史の記述が少なくなかったが、しかし政治史の概略を読者に伝えようという努力を放棄することなく、はるかに面白さを感じられる本だった。

本書では具体的史実に関してメモすべきことも無い。

著者の力量は認めるし、悪書とまでは言いません。

しかし率直に言って、読み終えた後、失望と徒労感を禁じ得ませんでした。

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