万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年7月26日

G・W・ヘーゲル 『歴史哲学講義 上・下』 (ワイド版岩波文庫)

Filed under: 思想・哲学 — 万年初心者 @ 06:00

普段取り上げてる本のレベルからすると、「何をトチ狂ったんだ、コイツは」と思われるでしょうが、たまたま気が向いたので本書を手に取りました。

当然ながら、これまでヘーゲルなど一行も読んだことありません。

しかし、高校の倫理の時間に習ったようなことが頭に入っていれば、これは普通に読めます。

読むのに一週間ほどかかったが、通読はさして困難ではなかった。

長谷川宏氏による新訳のお蔭かとも思う。

最初の凡例で

訳語は、いわゆる哲学専門用語のたぐいをなるべく避けた。たとえば、原書に頻出するSittlichkeitは、「人倫」の訳語をあてるのが通例だが、本書ではこの訳語はとらず、文脈に応じて、「共同体」「共同精神」「共同の倫理」「共同感情」「社会性」「道徳的」などの訳語をあてた。

と書かれているのを読めば、それだけで相当わかりやすい翻訳になっているなと推測できる。

もちろん、所々よくわからない部分も出てくるが、少なくとも全く論旨がつかめずに立ち往生して放り出すということはなかった。

内容についてあれこれ書こうとしても、私の知能だととんでもない誤読を書き連ねることにもなりかねないので、これ以上無いほど大雑把な論旨だけ書くと、世界史とは自由の発展の歴史であり、その観点から見るとアフリカやシベリア、高地アジアなどは論外、中国とインドもダメ、ペルシアに代表されるオリエント世界でちょっとマシになって、ギリシアにおいて自由の可能性が大きく開花するが同時に強い限界もあり、結局完全な自由を実現するのはキリスト教的ゲルマン国家であり、それもカトリックではなくプロテスタント諸国がその完璧な体現者だ、というもの。

どんな素人でもやろうと思えば、いくらでも突っ込みたくなる史観ではあるが、私ごときがこういう大思想家に文句をつけても仕方ないので、19世紀初頭のヨーロッパ人にはこう見えたんだなとひとまず御説拝聴しておく。

なお、ギリシアとゲルマン国家の間にあるローマに対する評価がかなり低いのが印象的だった。

ローマの支配はペルシアに比べてもある意味で過酷であったが、その圧政によって人間精神が鍛え上げられ、キリスト教の誕生を可能にしたというふうに読める記述があった記憶がある。

この点、ヘーゲルの思弁的歴史観を批判したランケが『世界史概観』(岩波文庫)を、ギリシアを無視して、古代史のすべての流れが集積され近世史のすべての流れが流出する源とも喩えられるローマから始めているのと対照的で、ちょっと面白いと思った。

(しかし、これも枝葉の部分を誇張した誤読かもしれない。)

この種の本にしてはかなり読みやすい方だと思いますので、気が向いたら皆様もお読み下さい。

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