万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年7月20日

上田雄 『渤海国の謎』 (講談社現代新書)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

1992年刊。現在は『渤海国』というタイトルで講談社学術文庫に収録されている模様。

高校教科書にも必ず出てくる王朝ではありますが、この国が中国史に属するのか、朝鮮史に属するのかで、中韓間の外交摩擦すら生じているのはご存知の通り。

その件については文庫版のまえがきで著者も少しだけ触れているようだ。

教科書では唐代の東アジア文化圏の一国として、吐蕃・南詔・新羅・日本と同列に扱っているようなので、一応カテゴリは中国にしておきます。

668年高句麗が唐軍の攻撃によって滅ぼされた後、高句麗王族の流れを汲むという大祚栄が698年に建国。

支配層は高句麗の遺民を中心とする朝鮮系で、国民の大部分は原住民の靺鞨(まっかつ)族だったらしい。

都は時に変動があったが、基本は上京龍泉府。

初代大祚栄没後、二代目の大武芸が盛んな武力をもって近隣に領土拡大、次の大欽茂の代には文治主義を採用、唐文化の移入に努める。

以後の王は系図もはっきりしない部分があるので、とりあえず憶えなくていいでしょう。

最後は926年に契丹に滅ぼされ、その特色ある文化を伝えるものも無い程徹底的な破壊を蒙る。

本書で以上の通常の通史的部分は第一章のみ。

残りの二章から六章までは日本・渤海関係史に費やされている。

この辺、ちょっとアンバランスを感じないではないが、読むに耐えないというような退屈さは無いし、興味を持って読める部分もある。

最初両者間にある新羅を仮想敵国とした軍事同盟の色彩が濃かった日渤関係だが、後には経済・文化面での穏和な交流が主となる。

その様相を多くの例を挙げながら詳細に記述している。

その他、渤海との使節交換と遣唐使との関連にも紙数を割いている。

読みやすい方だと思うし、そんな悪い本でもないです。

ただ類書として、浜田耕策『渤海国興亡史』(吉川弘文館)があり、こちらの方がオーソドックスな通史に近いので良いかなとも思います。

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