万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年7月9日

長谷川輝夫 『聖なる王権ブルボン家』 (講談社選書メチエ)

Filed under: フランス — 万年初心者 @ 06:00

17~18世紀フランスに君臨したブルボン朝君主の列伝風史書。

(19世紀初頭の復古王政は範囲外。)

各国王の在位期間が長いので、1589年のアンリ4世の即位から1789年の大革命までのちょうど200年間に存在した君主はアンリ4世・ルイ13世・ルイ14世・ルイ15世・ルイ16世の5人だけ。

これらの国王名は高校教科書ではすべてゴチック体で載っていて暗記することになっている。

考えてみると高校レベルで、属する君主をすべて覚える必要のある王朝というのも少ない。

ブルボン朝の他にはイギリスのテューダー朝とステュアート朝くらいか。

あと、中国の清朝は歴代皇帝の名が一応すべて出ますね。

閑話休題。

プロローグで、著者は、あえて経済・社会史的、法制史的アプローチを取らず、人物史の形式を取ったと書いてある。

ということはすなわち私のような人間向きの本であると言えます。

詳しい系図や地図が付されていて親切。

王家の細かな人的関係を把握しながら、実にわかりやすくこの時期の政治史を物語っている。

男子の王族だけでなく、アンリ4世妃のマリ・ド・メディシス、ルイ13世妃でスペイン出身のアンヌ・ドートリッシュなどの王妃や、ルイ14世の愛妾モンテスパン夫人、マントノン夫人、ルイ15世のそれであるポンパドゥール夫人、デュ・バリー夫人などの愛人たちにも触れられている。

文章も読みやすいし、曖昧な点を残さず、最後までよく整理された叙述が続く。

内政と外交の関連にも程よく目配りされている。

例えば、サンバルテルミの虐殺(1572年)の背景としてユグノー指導者のコリニー提督がオランダ独立戦争(1568~1609年)のプロテスタント反乱者側での参戦を主張していたとか、フロンドの乱(1648~53年)の際パリ高等法院が1649年ピューリタン革命におけるチャールズ1世処刑の報を聞き、民衆運動が制御不能になるのを恐れて一時王権と妥協的態度を取ったとか、ファルツ継承戦争(1688~97年)の開戦決断はオスマン朝の第2次ウィーン包囲(1683年)によるオーストリアの疲弊を考慮に入れていたとかという事実は他の概説書等では読んだ記憶が無く、面白いと思った。

平易な記述ながら、内容は詳しく、初心者が熟読すればかなり力がつく。

近世フランス政治史のテキストとしては非常に有益。

お勧めします。

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