万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年6月27日

樺山紘一 『ルネサンスと地中海 (世界の歴史16)』 (中公文庫)

Filed under: ヨーロッパ, 全集 — 万年初心者 @ 06:00

以前読んだことのあるこれをこの度10年ぶりに再読。

記事にするのが二度目なので、ここのタイトルは文庫版にしておきます。

単行本の記事はこちら

ルネサンス史ということで当然文化史が中心。

他の国々にも触れられているが、イタリアに極めて大きな比重を置いた記述。

カテゴリは「全集」と「ヨーロッパ」にしてますが、「イタリア」でも別に構わないかなというほど。

文化史に加えて社会史的記述が多く、政治史はごく大まかな見取り図としてだけ提供される。

それゆえ単行本の記事で書いた通り、私には向いていない本ということは言える。

しかし、再読した感想は予想以上に良かった。

私には十全に感じ取れないとは言え、全体的に非常な高尚な印象を受ける叙述。

表現も巧いし、含蓄がある。

流れるような文章でスラスラ読めるので、簡単に読了できた。

ルネサンスの通俗的な理解を近年の研究成果によって訂正しつつ、各章の最後で著名な芸術家・文化人・パトロンの肖像を描くという構成は見事。

「インテルメッツォ<人びとの肖像>」と題された伝記部分は(単行本では)見開き2ページという短さで各人の事績と人物像を鮮明に記憶に刻み込んでくれる。

通常の記述部分でも、例えばカトリックとプロテスタントの人間観の違いなど目の冴えるような明解な説明で、非常にわかりやすく面白い。

政治史的記述もごくわずかとは言え、ポイントを突いたものでルネサンスの舞台装置の理解を深めてくれる。

前の記事では、私以外の人にとっては良書ではないかと控え目に書きましたが、再度読んでみると、これはかなりの名著ではないかと思えてきました。

中公新版「世界の歴史」の第一回配本にふさわしい良書と言えましょう。

是非お勧め致します。

なお同時代を扱った本で、事実関係の記述により詳しいものとしてモンタネッリ、ジェルヴァーゾ『ルネサンスの歴史 上・下』(中公文庫)があります。

こちらも素晴らしい。

人物を中心に興味深いエピソードを常に交えて近世初頭のヨーロッパ史を全く飽きさせずに読ませる。

初心者向け啓蒙書としては最高レベルの本。

以前にも書きましたが、モンタネッリのイタリア史シリーズを全巻通して翻訳出版してもらえないものでしょうか。

『ローマの歴史』(中公文庫)と『ルネサンスの歴史』がこれだけロングセラーになっているのだから、出せば絶対売れると思います。

中央公論の担当者様、是非御一考をお願い致します。

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