万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年6月23日

マックス・ウェーバー 『社会主義』 (講談社学術文庫)

Filed under: 思想・哲学 — 万年初心者 @ 06:00

1918年6月に行われたウェーバーの講演。

当時は第一次大戦末期であり、前年ロシア革命が勃発、東部戦線ではブレスト・リトフスク条約で休戦が成立、ドイツ軍は西部戦線で最後の攻勢に出るが、この半年後に敗北する。

本文は70ページほどの短さなのですぐに読了できる。

官僚制化という近代社会の趨勢は社会主義革命によっても変えることはできないし、革命後はかえって国家官僚への国民の隷属が一層酷くなるであろう、というのが論旨。

他に、教条的マルクス主義の資本主義崩壊論の誤りを指摘したりしてますが、はっきり言ってあんまり面白くないです。

訳者の解説ではウェーバーの大戦前の社会民主党に対する批判とドイツ革命での態度について書かれていて割と参考になる。

ワイマール共和国の政党を左から右に並べると、共産党、独立社会民主党、社会民主党、民主党、中央党、人民党、国家人民党、ナチスとなりますが、ウェーバーは中道自由主義政党である民主党に参加。

(独立社会民主党はまもなく左右に分裂、存在を解消して左派は共産党に、右派は多数派社会民主党に合流。)

自由主義者は極左的な暴力革命を否定し、議会制民主主義の枠内に革命を留めようと努力し、ウェーバーも同様の態度を取る。

自由主義勢力や社会民主党が保守派や軍部と協力して、ドイツの共産化を阻止したわけですが、一昔前はそれが一部で「裏切り」と見なされていたわけですから、考えてみれば無茶な話です。

セバスティアン・ハフナー『裏切られたドイツ革命』(平凡社)のように共産主義にはっきり反対する立場でありながら、社会民主党が国制改革を徹底して押し進めず、労働者階級が権力を完全に掌握しなかったことを批判し、それが結局ナチの勝利に繋がったとする本もあるが、ちょっと首を傾げてしまう。

この本を読んだ時、事実上の選択肢としては存在しなかったと承知しながらも「そもそもドイツで帝政が続いて政治が民主化されなかったら、ヒトラーが政権を取る可能性は全く無かったんじゃないの?」という全く別な感想が浮かんできた。

国政の民主化は不可避だったにしても、林健太郎『ワイマル共和国』(中公新書)などを読むと共和政への移行はかなりの偶然が作用しているようなので、もし帝政が続いていたらという歴史のイフを考えて、政治権力から分離された権威の中心があったなら、日本やイタリアの例から見て軍部によるヒトラー打倒運動が成功した可能性がより高まったのではないかとも思えてくる。

こんなことは埒も無い素人談義に過ぎないと弁えつつも、本書の解説を読んだ後、どうしてもいろいろ考えてしまいました。

ただ本書自体はさして重要で面白いとも思えませんでした。

類書、というほど似たタイプの本では無いんですが、関連本としてマイネッケ『ドイツの悲劇』(中公文庫)は是非読むべき本だと思いますので、こちらも機会があればお手にとって下さい。

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