万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年6月19日

C・A・ビアード 『アメリカ政党史』 (東京大学出版会)

Filed under: アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

書店や図書館で時々見かけながらこれまで読む機会の無かった本書をこの度通読。

1787年制定の合衆国憲法を支持する連邦派(フェデラリスト)とこれに批判的な反連邦派(アンチ・フェデラリスト)がアメリカ建国後最初の政治的党派であり、前者が今日の共和党、後者が民主党の源流。

しかし反連邦派がリパブリカン(共和派)と名乗ったのでややこしい。

図式的に言うと、連邦派(フェデラリスト)は「ハミルトンの指導・中央集権主義・商工業立国・保護関税・親英外交・デモクラシーへの警戒」を主な主張とするもので、これに対し反連邦派(リパブリカン)は「ジェファソンの指導・州権主義・農業立国・自由貿易・親仏外交・デモクラシーの称揚」。

ごく大雑把に整理すると、フェデラリストは右派であり、リパブリカンは左派である。

初期の連邦派の優勢の後、第3代ジェファソンからリパブリカン所属の大統領が続き、1810年代半ばからフェデラリストは衰退、一時リパブリカンの一党支配の状況となる。

フェデラリスト系勢力は1830年代に国民共和党として復活、まもなくジャクソン政権の専横に反対する意味でホイッグ党と改称する。

イギリス史ではトーリー党に対して進歩的な勢力がホイッグ党に集結するが、アメリカ史では右派的勢力がホイッグを名乗っている。

この時期、リパブリカンは民主共和党を称していたと読んだ覚えがあるが、本書ではこの名称には触れられていない。

ジャクソンの与党が民主党となり、ホイッグ党と対立。

奴隷問題の緊迫化を契機にホイッグ党を中心として1854年共和党結成。

これで二大政党が成立、以後今日まで変化無し。

19世紀末に人民党、20世紀初めに革新党という第三勢力ができるが、大きな流れにはならず。

なお、「初心者がアメリカ史を学ぶ上で」の記事で、アメリカ歴代大統領は出来れば暗記しましょうと書きましたが、よい機会なので19世紀末までの大統領を、就任年度・所属党派と共に以下メモしておきます。

まず建国からジャクソン政権まで。

1789年 ジョージ・ワシントン(連邦派)

1797年 ジョン・アダムズ(連邦派)

1801年 トマス・ジェファソン(リパブリカン)

1809年 ジェームズ・マディソン(リパブリカン)

1817年 ジェームズ・モンロー(リパブリカン)

1825年 ジョン・クインシー・アダムズ(リパブリカン)

1829年 アンドリュー・ジャクソン(民主)

初代ワシントンは無党派と記している本もあるが、本書の末尾の歴代大統領一覧では連邦派と表記されている。

上記の通り、ジェファソン以降はリパブリカン党とその流れを汲む民主党優勢。

マディソンは元フェデラリストで、『ザ・フェデラリスト』の共著者だが、リパブリカンへ転向。

ジョン・クインシー・アダムズはジョン・アダムズの息子。

本書ではこの人は親と反対にリパブリカンだったという扱いだが、リパブリカンから反ジャクソンの主張を掲げて分離したこのジョン・クインシー・アダムズ一派をもって国民共和党の祖とする見方もある模様。

この辺は知識不足で私にはよくわかりません。

次にジャクソンからリンカーンまで。

1837年 ヴァン・ビューレン(民主党)

1841年 ウィリアム・ハリソン(ホイッグ)

1841年 ジョン・タイラー(ホイッグ)

1845年 ジェームズ・ポーク(民主)

1849年 ザカリー・テイラー(ホイッグ)

1850年 ミラード・フィルモア(ホイッグ)

1853年 フランクリン・ピアース(民主)

1857年 ジェームズ・ブキャナン(民主)

1861年 エイブラハム・リンカーン(共和)

ハリソンとテイラーの二人のホイッグ党大統領は任期中に病死。

最後にリンカーン以後からマッキンリーまで。

1865年 アンドリュー・ジョンソン(共和)

1869年 ユリセス・グラント(共和)

1877年 ラザフォード・ヘイズ(共和)

1881年 ジェームズ・ガーフィールド(共和)

1881年 チェスター・アーサー(共和)

1885年 グローヴァー・クリーヴランド(民主)

1889年 ベンジャミン・ハリソン(共和)

1893年 グローヴァー・クリーヴランド(民主)

1897年 ウィリアム・マッキンリー(共和)

アンドリュー・ジョンソンは南部分離反対派の民主党員だが、共和党に推されて副大統領となり、リンカーン暗殺後大統領に昇格。

よって民主党の大統領と表記している本も多いが、本書では共和党所属扱い。

ガーフィールドは任期中に暗殺。暗殺された米大統領はリンカーン、ガーフィールド、マッキンリー、ケネディの四人。

この時期は完全な共和党優位(議会は民主党多数の時もあった模様)。

マッキンリーの後は、セオドア・ルーズヴェルト、タフトと共和党政権が続くから、南北戦争から1913年ウッドロー・ウィルソン就任までの半世紀間、民主党の大統領は(アンドリュー・ジョンソンを数えなければ)クリーヴランドただ一人ということになる。

このクリーヴランドは間を置いて再選された唯一の大統領でもある。

現在は大統領の三選は禁止されているが、これは連続三選の意味らしく、数年前に現実味はほとんど無いがという前提でビル・クリントンが再度民主党大統領候補になる可能性についてのベタ記事をある新聞で読んだ記憶があります。

年齢だけから言うと可能性は絶無でも無いですが、ご存知の通りあのエゲツない嫁がやる気満々で出馬しましたので、いよいよあり得ない話でしょう。

本書の内容はなかなか良く出来ていると思います。

政党史といっても狭い専門史という感じではなく、ごく平易な政治史の見取り図を得るために使える。

初心者にとって通読すれば効用は大きい。

原著の記述は1920年代までであり、続きは訳者による補遺である。

その旨あとがきに記してあるのだが、できれば前書きを作って明記しておいてくれたらより親切だったのにと思った。

大部の本ではなく、楽に通読できますので、機会があればお読み下さい。

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