万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年6月16日

『ショーペンハウアー全集 13』 (白水社)

Filed under: 思想・哲学 — 万年初心者 @ 06:00

最初に申し上げておかないといけないのは、この「哲学小品集Ⅳ」の巻のうち、冒頭の「法学と政治によせて」しか読んでおりません。

トーマス・マン『非政治的人間の考察』(筑摩書房)で引用されていたのを見て、是非読むべきだなと思ったので。

確かに素晴らしい内容ですが、30ページ余りとあまりに短すぎる。

とは言え、この哲学小品集からピックアップされた文章が、『読書について』『自殺について』『知性について』と文庫化されているなら、まずこれを他の文章との抱き合わせでもいいので刊行して欲しいと切実に思いました。

しかし、本書に接したほとんどの方は「何だ、こりゃ???」と感じるだけだと思います。

私自身、本書ほど徹底した反動主義的主張になぜこれほど心を動かされるのか、自分でも上手く説明できません。

乏しい脳味噌を絞って考えると、現代におけるある種の過剰な価値観への解毒剤としては、本書くらい副作用の強い薬を服用する必要があるということでしょうか。

私は非常に面白いと思いましたので、存在だけは紹介しておきます。

これが、完全に時代錯誤な頑迷家のたわ言なのか、それとも現代の相対主義の泥沼から抜け出すための導きの糸なのかの判断は、皆様にお任せします。

いたるところ、あらゆる時代に、政府や法律や公の機構に対する不満が絶えたことはない。しかしそれは大部分、人間の生活に不可分離にくっついている悲惨、神話的にいえば、アダムが受けた呪いであり、アダムとともに人類全体が受けた呪いともいうべき悲惨を、いつでも政府や法律などのせいにするからにほかならぬ。しかしそういった誤ったなすりつけを、「いまどき」の民衆煽動家以上に、嘘っぱちの鉄面皮なやりかたでやったものはない。彼らはキリスト教の敵として楽天主義者なのだ。世界は彼らにとって「自己目的」であり、したがってそれ自体において、すなわちその自然の性質のうえで、完全にすばらしくできあがっているのであり、至福の棲み家である。これを打ち消すような世界の巨大な禍を、彼らはすべて政府の責任に帰するのだ。政府がその責任さえはたしておれば、地上に天国が出現し、万人がなんら苦労しないでもたらふく食い、鯨飲し、おたがい宣伝しあったうえ、くたばることができるというのだ。じつはこれは彼らの称する「自己目的」をわたし流に言いかえたもので、彼らがはなやかなきまり文句で倦むこともなく唱えている「人類の無限の進歩」の目的とするところなのだ。

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