万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年6月3日

R・S・シャルマ 『古代インドの歴史』 (山川出版社)

Filed under: インド — 万年初心者 @ 06:00

太古から8世紀ごろまでのインド史。

一章ごとのページ数が少なめなので読みやすい。

ターパル、スピィア『インド史』(みすず書房)に比べて、特に悪くもなく、載っている地図は本書の方が詳しくて良いが、本文の叙述はやや重厚さに欠けるか。

北インドにおける諸王朝の興亡は教科書の標準的記述と同じく素直に読んで理解できますが、南インド史は少々ややこしいので、以下私的にメモします。

そもそも南インド史がなぜわかりにくいかというと、まず高校世界史であまり習わない。

私の記憶に残っていた南インドの王朝はサータヴァーハナ(アーンドラ)朝とヴィジャヤナガル王国、あと付け加えればチョーラ朝のみ。

『世界史B用語集』を見ると、その他の王朝もそこそこ載っているが、高校時代には全然馴染みが無かった。

それと地理がうまくつかめない。

一口に南インドといっても広大な領域なので、デカン高原・東海岸・西海岸・南端部のどこに勢力をもった国家なのかをいちいち把握しなければならない。

近藤治『インドの歴史』(講談社現代新書)の131ページに南インドの王朝交代図という便利な表があるが、そこではターパル『インド史』を引用し、南インド政治史において西部デカン地方とタミル地方という二つの領域を設定し、さらに後者のタミル地方を南端部地方と南東部地方の二つに分けて説明している。

さらに王朝の存続期間の問題がある。

パーンディヤ朝(前3~後14世紀)やチョーラ朝(前3~後13世紀)のようにやたら寿命の長い王朝があり、他にもチャールキヤ朝、チェーラ朝もかなり長期間存続しているが、盛期によって前・後期の二つ(場合によっては三つ)に分かれたりするのが、最高にややこしい。

本書の範囲内の南インド政治史の概略を記すと以下の通り。

デカンでサータヴァーハナ朝が栄えていた頃、南東部地方で前期チョーラ朝、南端部地方で前期パーンディヤ朝、南端部西海岸地方で前期チェーラ朝が繁栄するが、これらはすべて後2世紀ごろに衰退。

サータヴァーハナ朝滅亡後、デカンでヴァカタカ朝が興起。グプタ朝のチャンドラグプタ2世はこの王朝と婚姻関係を結び一時影響下に置く。

6世紀半ば、ヴァカタカ朝の後を前期チャールキヤ朝が継ぎ、200年間支配を継続した後、8世紀半ばにラーシュトラクータ朝に滅ぼされる。

南東部地方では3世紀後半から9世紀末にかけてパッラヴァ朝が繁栄。

南端部ではパーンディヤ朝が復興。

チャールキヤ朝とパッラヴァ朝は激しく抗争、チャールキヤ朝のプラケシン2世は、ハルシャ王率いるヴァルダナ朝の南征軍を撃退したが、パッラヴァ朝との戦いで敗死。

北インド史の全般的傾向としては、マウリヤ朝・クシャーナ朝時代は中央集権的帝国組織が機能し、商業と外国貿易で都市が繁栄した時代と捉えられているのに対し、グプタ朝以後は土地施与政策による分権化・封建化が進んでおり、貿易・商業と都市の衰退によって特徴付けられる時代とされている模様。

総合的に見て悪い本ではないと思います。

姉妹編としてサティーシュ・チャンドラ『中世インドの歴史』(山川出版社)というのがあるようです。

みすず書房の『インド史』とどちらを基本テキストにするか迷いますが、私としてはやはりみすず書房の方がやや上かなと思います。

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