万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年5月22日

『アデナウアー回顧録 Ⅰ』 (河出書房)

Filed under: ドイツ — 万年初心者 @ 06:00

1949~63年西ドイツ初代首相を務めたコンラート・アデナウアーの回想録。

1968年刊。訳者は佐瀬昌盛。この翻訳書は全二巻で、1945~53年の部分のみ訳出。

今、30歳くらいから下の人は、「西ドイツ」なんて聞いてもピンと来ないんでしょうね。

私は物心ついた頃の日米の指導者が現首相の父上とカーターだったという世代の人間なので、当然ドイツは東西に分かれてた。

1990年のドイツ再統一の後、テレビのニュースで「ドイツのコール首相が・・・・・」なんて聞くと、かなり長い期間違和感がありました。

あとソヴィエト社会主義共和国連邦という国名には地名が入ってないわけですが、「ソヴィエト」というのが地名の一種のような感じがしてきて、小中学生の頃はロシアというのは「昔あったけど今は無くなった国」みたいな感覚でした。

いつにも増して話が脱線してるので元に戻します。

アデナウアーは1876年生まれ、カトリックの中央党に所属し、ワイマール共和国時代の1919年から33年ナチによって罷免されるまでケルン市長を務める。

戦争末期ヒトラー暗殺計画に関与したとして強制収容所に送られ、敗戦時に釈放。

1945年12月カトリックだけでなくプロテスタントにも門戸を開いた広範な穏健派を結集した保守政党、キリスト教民主同盟(CDU)を結成。(バイエルン州のみキリスト教社会同盟[CSU]の名称をとる。)

このCDUと左派の社会民主党(SPD)、中道派の小政党・自由民主党(FDP)が、1980年代に緑の党が進出してくるまで、西ドイツの主要政党となる。

米ソ冷戦の高まりと共に、東ドイツのソ連占領地域では、他の東欧諸国と同じく、社会民主党が共産党に吸収合併されて生まれた社会主義統一党による独裁体制が固まっていく。

それにつれて西側諸国ではドイツへの懲罰的処置を中止し、西ドイツを西欧の一員として強化する動きが出てくる。

1946年の米・英占領区の経済統合がその一つだが、フランスは依然対独警戒心が強くこの時点では占領区統合に加わらず。

しかし47年マーシャル・プランを期にフランスも徐々に態度を改める。

48年に入ると西ドイツ通貨改革とベルリン封鎖で東西の分裂がさらに深まる。(この通貨改革については本書では特にまとまった記述が無かった気がする。)

同年中、西ドイツ地域での中央政府樹立の目的で憲法制定会議が召集。

翌49年統一までの暫定憲法というニュアンスで基本法と名付けられた憲法制定、ドイツ連邦共和国成立、選挙でCDUを勝利に導いたアデナウアーが初代首相就任。

本書と合わせて、主に高坂正堯『外交感覚』(中央公論社)などで仕入れた西ドイツ政治の知識を確認すると、地方各州の権利を保障した連邦制を採り、議会で選出される儀礼的存在の大統領が元首、実際の政務は首相が行う。

死票が少なく「民主的」ではあるが小党分裂を招きやすい完全比例代表制をとって失敗したワイマール共和国の歴史に鑑み、5%以下の得票率の政党には一切議席を与えない条項を持つ比例代表制導入。

ナチスが猛烈な大衆運動によって台頭したことを反省し、直接民主政を可能な限り排除。

任期満了以外での国会解散・総選挙は基本的には無し(この前シュレーダーがやったのが戦後初めてと聞いた覚えがある)。

かつてナチと共産党の議事妨害で議会が麻痺状態となったことに鑑み、国会での不信任案は反対派が新たな多数派を形成し安定した政権を誕生させる見込みがあるときのみ有効とする「建設的不信任」制度を設ける。

民主主義擁護のためには結社の自由も一部制限が課され、共産党とネオ・ナチ政党にしばしば違憲判決が出されている。

小政党ながら中道派のFDPが議席を維持し、CDU・SPDと連立を組むことによって政治の左右への分極化を防ぐ貴重な役割を果たしてきた。

連邦共和国成立といっても、主権は制限され、占領法規は継続し、米英仏の高等弁務官が君臨し、経済力の制限、工業施設の撤去、ルール工業地帯の国際管理、外交権限の剥奪(建国当初外務省は無し)など様々な制約が課された。

これらを西側諸国との協調関係を維持しつつ取り除いていくアデナウアーの苦闘が記されている。

内政では個人と企業の自由とイニシアティブを尊重しながらも極端な競争による弊害の除去も目指した混合経済政策である「社会的市場経済」を採用、奇跡の経済復興を遂げる。

それにひきかえ、シューマッハー率いる野党SPDはソ連共産主義を徹底的に排撃しながら、マルクス主義的世界観になおもこだわり、内政では教条主義的な計画経済に固執し、外交では西側諸国との協調維持の必要を弁えずいたずらな高姿勢を取り、国益に反することしかしていないという印象を本書の記述からは受ける。

もちろん本書のように反対者の手に成る叙述からだけで判断するのは不当でしょうが。

第二巻は近日中に記事にします。

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