万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年3月6日

渡辺金一 『コンスタンティノープル千年』 (岩波新書)

Filed under: ビザンツ — 万年初心者 @ 06:00

タイトルから想像されるような、通常の形式のビザンツ通史ではありません。

「“皇帝教皇主義”に則り、皇帝にすべての権力が集中した専制国家というイメージのあるビザンツ帝国ですが、実は皇帝即位には元老院・首都市民の承認が不可欠となっており、動乱期における帝位の移動は世論の動向次第だったんですよ」というのが主な論旨(たぶん)。

世論に左右される帝位は極度に不安定で、およそ半数の皇帝が暗殺やクーデタでその地位を追われている。

閉鎖的・退嬰的という印象とは異なり、社会的流動性も異様に高く、最下層から皇帝に昇りつめる例がみられる一方、国政が私的グループの権益争いの場と化してしばしば混乱し、安定した世襲貴族階級も生れず、そこから西欧のような身分制議会が成長することもなかったと論じている(私の誤読でなければ)。

具体的な史実は、以上の命題の例証として帝位争いの実例が時代もバラバラにいくつか取り上げられているだけです。

よって当然ながら一般的な通史としては不適当です。

かといって同じ「ビザンツ」カテゴリに入っているギボン『ローマ帝国衰亡史』の後半部分(10巻)はそうそう気軽に読める本ではないので難しいですね。

中公新版「世界の歴史」の該当巻でも読んだ方がいいのかもしれません。

本書の内容自体は面白いし、スラスラ読めます。

なかなかの良書といっていいんじゃないでしょうか。

同じ著者の『中世ローマ帝国』(岩波新書)も読みたくなりました。

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