万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年3月3日

大垣貴志郎 『物語メキシコの歴史』 (中公新書)

Filed under: ラテン・アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

先月下旬に出たばかりの新刊。

このシリーズで中南米地域では『物語ラテン・アメリカの歴史』は出ていたが、各国別の本はこれが初めて。

あとキューバ・ブラジル・アルゼンチン・ペルー・チリあたりは出そうですね。

気長に待ちましょう。

本書はまずスペイン侵入以前のメソアメリカ文明の記述から始まる。

ちなみにこのメソアメリカ文明という言葉は中米地域の諸文明のみを指し、インカ帝国に代表される南米大陸の諸文明はアンデス文明として区別されるようです。

似たような名前が多くて、少々面倒ですが確認しながら読むと、まず東部メキシコ湾岸地域にオルメカ文明が前1200年から前400年ごろまで栄える。

ユカタン半島では、誰でも知ってるマヤ文明が前500年ごろからスペイン人による征服まで盛衰を経ながらも存続。

メキシコ高原地域ではテオティワカン文明が紀元前後から7世紀まで、その滅亡後トルテカ文明が11世紀まで繁栄。

その後チチメカ人が侵入してきて、その一派のアステカ族が15世紀にアステカ王国を建国、首都テノチティトランを築く。(上記のテオティワカンと混同しやすい。テノチティトランはテオティワカンのやや南西部にあり現首都メキシコシティ。)

アステカ人は別名メシカ人ともいい、これがメキシコという国名の由来となる。

1521年コルテスによる征服の後、約300年間スペインの植民地統治を受ける。

1810年神父イダルゴの蜂起が起こり、モレーロスが続く。

両者は共に捕らえられ刑死したが、スペイン王党軍指揮官のイトゥルビデが考えを変えて反乱派と妥協したことによって1821年独立達成。

最初スペイン王室の誰かを国王に迎える動きがあったが、スペイン側に拒否されたため、独立の翌年イトゥルビデが皇帝として即位した。

ブラジルがポルトガル王室の一員を戴いて帝国として独立したのは高校世界史の範囲内ですし、よく知られていますが、メキシコもごく短期間ながら帝国だったんですね。

結局即位直後から議会との対立が深まり、イトゥルビデは一年で追放。

その後は混乱が続き、実力者サンタ・アナが断続的に大統領となる。

その治世下、1836年テキサス共和国分離独立(45年アメリカが併合)、1846~48年米墨(アメリカ・メキシコ)戦争敗北とカリフォルニア割譲で国土の半分を失う。

高校世界史ではラテン・アメリカ諸国の中でこの国の歴史が一番詳しく教えられるようで、以後の歴史における主要指導者である、フアレス、マクシミリアン、ディアス、マデロ、ウェルタ、サパタ、パンチョ・ビージャ(ビリャ)、カランサ、カルデナスといった名前は、私も高校生の頃から知っていました。

それぞれの政治的立場と主要事件とその年代を確認しながら一歩一歩読めば、非常に有益でしょう。

メキシコ革命後も権力闘争が長年続く中、1946年広範な勢力を結集した制度的革命党が結成され、それが日本の自民党のような一党単独政権を2000年まで続ける。

コンパクトに要領よく叙述されたおり、読みやすくて良い入門書だと思います。

ただ前半部の面白さが後半になるとかなり落ちるように感じたのは気のせいでしょうか。

いずれにせよこのシリーズの平均は十分クリアしていると思いますので、お勧めします。

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