万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年2月29日

『世界史B 改訂版』 (三省堂)

Filed under: 教科書・年表・事典 — 万年初心者 @ 06:00

今日も教科書の大雑把な感想です。

これの2006年版を入手したのですが、本書も山川の『詳説』と同じくらい詳しいですね。

名前を聞いたことのある執筆者は、西川正雄氏、古田元夫氏、馬渕貞利氏、森谷公俊氏あたり。

現代史の部分を読むと、どうも左派的な立場が強く打ち出されており、日本史教科書のように話題に上るのなら「偏向教科書」云々なんて論争が起こるのかもしれませんが、立場の相違に関わらず、私も含めて誰にとってもそういう話は鬱陶しいでしょうから止めます。

以下、載ってる歴史用語で気付いたことを脈絡無くバラバラに書いていきます。

「アカプルコ貿易」(別名ガレオン貿易・16世紀スペインがマニラ~メキシコ・アカプルコ間を繋ぎメキシコ銀で中国産品を買い付けた貿易)が太字で載ってます。

これは自分の高校時代に聞いた記憶はありますが、かなりマイナーな用語としてだと思います。

また、アフリカ史が異様に詳しい。

アシャンティ王国およびダホメ王国(17~19世紀西アフリカ黄金海岸に栄えた黒人王国)、サモリ・トゥーレ(19世紀末ギニアのフランスへの反抗者)、マジ・マジ蜂起(ドイツ領東アフリカ[タンザニア]での反乱)、メネリク2世(アドワの戦いでイタリア軍を撃退したエチオピア皇帝)、ベルリン西アフリカ会議(1884~85年アフリカ分割に関するベルリン会議)、以上が全部ゴシック体。

もっとすごいのが、19世紀初頭にオマーン王がザンジバル島などの東アフリカ沿岸都市からポルトガル勢力を駆逐して海上帝国を築いたことも載ってる。

そんなこと『新書アフリカ史』(講談社現代新書)読むまで全く知りませんでしたよ。

アフリカ繋がりでは、イギリスのエジプト保護国化のきっかけになった1881年反乱の指導者はアラービー・パシャと覚えていたのが、最近は全部ウラービーというようです。

先日の帝国書院教科書では語族系統不明とされていたカッシートとミタンニですが、本書ではインド・ヨーロッパ語族と断言されている。

意見が分かれてるんですかね?

マゼランの別読みの「マガリャンイス」は無理に添付する必要は無いんじゃないでしょうか。

アメリカの大資本家で、鉄鋼業のカーネギー、石油産業のロックフェラー、銀行業務のモーガンが太字なのは覚えよということでしょうか。

一般常識として名前を知っておくべきといっても変じゃないとは思いますが。

シャーマン反トラスト法が太字なのに、クレイトン反トラスト法が見当たらない。

アジア史にいくと、最近は遼を建てた民族をキタイという言い方を主にしてその後括弧して契丹と書いてますね。

李氏朝鮮で金属活字を作ったという「鋳字所」がなぜ太字?

「東学」は出ているが「東学党の乱」はカッコ内の表示も無くなって、「甲午農民戦争」のみ。

帝国書院教科書の記事で書きましたが、本書では百済・新羅の振り仮名が「ひゃくさい」・「しんら」になってる(括弧して「くだら」・「しらぎ」とも書いているが)。

これはどうにも違和感があって、間違った読みのように個人的には思えてしまう。

唐代に栄えた吐蕃は昔の教科書にももちろん出ていたが、その少し前に活動した同じチベット系の吐谷渾(とよくこん)は見た覚えが無い。

アンコール朝のスールヤヴァルマン2世、ジャヤヴァルマン7世を載せているのはシブイ。

ムガル朝期インドの文化史で、『アクバル・ナーマ』って覚えなきゃいけませんか?

隅っこの脚注で触れておけば十分な気がしますが。

西洋史に戻って、1802年アミアンの和約が太字なのは私の頃と変わりませんが、これそんなに重要なんでしょうか?

二年後ナポレオンが帝位に就くと即破棄されて戦争再開となるし。

一時でもイギリスに既成事実を認めさせたことが重要なのでしょうか。

よくわかりません。

フェニアン(フェビアン協会に非ず。1858年結成のアイルランド自治を目指す秘密結社)は私の頃の高校世界史には全く影も形も無かった。

ガリバルディが率いた軍隊の名称、千人隊(赤シャツ隊)は今年のセンター試験にも出題。

そんな大切とも思えないんですが。

現代史では、日中戦争時、1938年「国民政府を相手にせず」との第1次近衛声明が載っているのにビビる。

といって第2次声明が載っていないのが何か変な感じ。

また、1912年第二インターナショナルのバーゼル大会というのを高校生が知る必要があるのか疑問(バーゼルが太字になってる)。

ラテン・アメリカの「解放の神学」も要らないような・・・・・。1826年シモン・ボリバルが開いたパナマ会議も同様。

ラス・カサス神父を載せるのはいいですが(私の頃はたぶん載ってなかった)。

全般的な感想を言えば、本書も悪くはないと思います。

ただ各種ネット書店(三省堂の直販サイト含む)での扱いが無いのが厳しいですね。

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