万年初心者のための世界史ブックガイド

2008年2月25日

『新詳 世界史B』 (帝国書院)

Filed under: 教科書・年表・事典 — 万年初心者 @ 06:00

平成19年度版の帝国書院の世界史教科書が手に入ったので、私の高校時代に習ったこととの比較などを適当に書いてみます。

私の頃とは違って、今は世界史がAとBに分かれていて、Aは近現代重視で前近代はごく浅く学ぶだけで、多くの生徒はごく普通の課程であるBを学ぶそうです。

さて、この帝国書院教科書ですが、版形が一回り大きめで、一瞬内容の簡略な易しめの教科書なのかなと思わせるのですが、中身を見ると山川出版社の『詳説世界史B』並に詳しい。

執筆者のうちで名前を聞いたことがある人は、川北稔氏と小杉泰氏くらいです。

歴史用語のうち私の高校時代に馴染みが無かったか、あまり重視されていなかったもので、目に付いたものを挙げると、ノビレス(ローマの上層平民と貴族が連合した新支配層)、高車(トルコ系遊牧民)、ミスル(イスラムの軍営都市)、プファルツ継承戦争、コークス製鉄法、団結(結社)禁止法(1799年イギリス)、トゥサン・ルーヴェルテュール(ハイチ独立革命指導者)、「大不況」(1873年以降の世界的不況)、光緒新政(義和団事件以後の清朝の政治改革)、クルド人、キング牧師などがゴシック体で載っている。

しかし、ヤークーブ・ベグ(イリ条約の契機を作ったコーカンド・ハン国の将軍)や中華民国憲法(対日戦勝利後、蒋介石が1947年に公布)はゴシック体にする必要は無いし、そもそも要らないんじゃないでしょうか・・・・?

「財政革命」、「再版農奴制」、「17世紀の危機」、「環大西洋革命」などの歴史概念用語が載っているのも目新しい。

特に「17世紀の危機」は相当重視されており、イギリスのピューリタン革命・名誉革命、フランスのフロンドの乱、ドイツの三十年戦争などヨーロッパの事象を説明するだけでなく、明清交替や日本の鎖国などアジア史の章でも出てくる。

これは非常に特色があって、良い意味で教科書的ではなく、面白いと思った。

古代オリエント史で、カッシートもミタンニもインド・ヨーロッパ語族として覚えたが、今は言語系統不明扱いなんですね。

シュリーヴィジャヤ(室利仏逝)は7世紀から14世紀までスマトラ島に長期間存続した王朝ですが、10世紀以降の後期が「三仏斉(シュリーヴィジャヤの後身)」と書いて区別されています。

表記が違うものとしては、フビライ(これもクビライが主でフビライは括弧付き)の建てた帝国が「大元ウルス(元朝)」なんて書かれていてちょっと驚く。

さすがに各ハン国の呼称は従来通り「キプチャク・ハン国」、「イル・ハン国」だが、これも今の概説書などでは「ジョチ・ウルス」とか「フレグ・ウルス」とか呼ばれるようで、これは何度読んでも慣れない。

よく知りませんが、「モンゴル大好き」杉山正明先生の影響でしょうか。

李氏朝鮮という表記が無くなって、朝鮮王朝となっているのは、個人的には違和感を禁じえない。

ちなみに、私の世代では、新羅(しらぎ)を「しんら」、百済(くだら)を「ひゃくさい」と単に音読みするのも非常な抵抗がある。

そんな表記が教科書に載り始めたときは驚愕しましたが。

またこれは『詳説世界史』の2002年版でもすでにそうなのですが、近世イギリスの諸法令で、私の頃は首長令、統一令、航海条令、審査律、人身保護律と習ったものが、国王至上法(首長法)、統一法、航海法、審査法、人身保護法というふうに末尾が一律「~法」にされていました。

訳語を区別するだけの根拠に乏しいということでしょうか。

イスラムが「イスラーム」、コーランが「クルアーン(コーラン)」という表記になってる。

それでいてカリフが「ハリーファ(カリフ)」になっていないのがチグハグな感じ。

最近の事件として9・11同時テロやイラク戦争は予想通りですが「文明の衝突」論ということまで載っているのには驚いた(ハンチントンの名前は出ていないが)。

購入しにくく、こちらに表示されている各都道府県の教科書販売所まで出向かなければいけないようですが、もし機会があって手にとって頂ければ、なかなか面白く有益だと思います。

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