万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年12月28日

大杉一雄 『日中十五年戦争史』 (中公新書)

Filed under: 近代日本 — 万年初心者 @ 06:00

1996年刊。最近『日中戦争への道』と改題され、講談社学術文庫に収録された。

書名だけ見て、「いかにも硬直した左翼が付けそうなタイトルだなあ。駄本の臭いがプンプンする。こんなものには近づかないのが吉。」と思った方(というかまずなによりも私)は根本的に間違っています。

叙述対象範囲は1931~1945年の日中関係全史ではなく、満州事変から1938年初頭の戦争泥沼化まで。

また内容も通常の平凡な通史ではなく、日中双方にとって破滅的だった全面戦争を避けるためにはどうすればよかったのかを、歴史の節目ごとに精緻に検討し、慎重な留保を付けながらもその責任の所在を明らかにしようとする史論的な叙述である。

左右の極論を避け、様々な歴史のイフを挙げながら冷静に実際の史実とは別の可能性を追求する記述は実に面白い。

もちろん著者の史的解釈や価値判断に全て同意する必要は無いが、たとえ違った考えを持つ人でも本書によって歴史を読む楽しみを大いに得られるだろうと思う。

事実関係の描写も非常に整理された明解なもので、初心者でも楽に読めて記憶に残りやすい。

教科書的で砂を噛むような通史とは異なり、史実の意味付けがしっかりしたメリハリのある叙述によって深い印象を受けるので、頭の中で歴史の流れを再現することも容易でしょう。

これはかなりの名著ではないでしょうか。

アマゾンのレビューでもかなりの高評価がなされていますが、全く同感です。

著者は大学の研究者ではなく、財界人で独学で研究と執筆をした人のようです。

全く名前を聞いたことも無かったのですが、この著書は実に素晴らしいと思いました。

ただタイトルは内容とあってないだけでなく余計な先入観も与えかねないので、文庫化に際して改題したのは適切ですね。

新書版は品切れですが、上述のタイトルの文庫版を是非お買い求めください。

ほとんどの方にとって損は無いと思います。

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