万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年12月24日

山内進 『北の十字軍』 (講談社選書メチエ)

Filed under: 東欧・北欧 — 万年初心者 @ 06:00

十字軍・レコンキスタと並んで中世ヨーロッパの拡大運動であるバルト海沿岸へのドイツ人東方植民をその前史から叙述した本。

マイナー分野での貴重な啓蒙書だが、事実関係の記述が詳しすぎて、初心者にはゴチャゴチャした印象を与える。

細かな史実や人名は覚えようとせず、ごく大まかな経緯と雰囲気を知ればよいと構えた方がいいでしょう。

でないと高校世界史レベルの読者(私を含む)は挫折しそうになります。

12世紀末までにエルベ川とオーデル・ナイセ川の間に居住していたバルト・スラブ人(ヴェンデ人)がキリスト教化され、以後征服の対象はさらに東のプロイセン、リヴォニア(ラトヴィアとエストニアの一部)、エストニア、リトアニアなどに移る。

プロイセン、リヴォニア、エストニアはドイツ騎士団・リーガに設置された大司教・デンマーク王などの西方勢力に屈するが、1242年ノヴゴロド公アレクサンドル・ネフスキーがチュード湖氷上の戦いでドイツ騎士団軍を破り、彼らのギリシア正教圏への進入は押し止められる。

(当時ロシアにはバトゥ率いるモンゴル軍が殺到していたが、ノヴゴロドは危うくその攻撃を免れていた。)

またバルト諸民族のうち、リトアニアだけはミンダウガスとその孫ゲティミナスなどの優れた指導者を得て統一国家を形成することに成功し、後にはキリスト教に自発的に改宗して十字軍の口実を奪い、ドイツ人勢力に激しく抵抗する。

ゲティミナスの娘がピアスト朝ポーランドのカジミェシュ3世(カシミール大王)と結婚し、さらに孫のヤギェウォが大王の甥の娘でピアスト朝唯一の後継者となっていたヤドヴィガと結婚したことで、リトアニア・ポーランド王国(ヤギェウォ朝・ヤゲロー朝)が成立する。

ヴワディスワフ2世と名乗ったヤギェウォは1410年タンネンベルクの戦いでドイツ騎士団を大敗させた。

以後ドイツ騎士団領は衰退し、東プロイセンのみを領有し、ドイツ本国との間はポーランドに占められる。

第一次大戦後のドイツ領土が一部飛び地になり、その間がポーランド回廊と呼ばれましたが、その遠因はこの時代にあるそうです。

その後16世紀前半、当時たまたま騎士団総長がホーエンツォレルン家出身者だった時に宗教改革の波が押し寄せ、騎士団員がルター派に改宗の上、騎士団領を世俗的なプロイセン公国となし、以後ブランデンブルクとの繋がりが濃くなっていくわけであります。

本書の中心的な主題は十字軍概念と異教徒の権利についての論争なんでしょうが、私は以上のように事実関係の記述のうち、ごく簡略な流れを読み取る方に力点を置きました。

少々複雑な部分もありますが、なかなか良い本だと思います。

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