万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年9月9日

塩野七生 『ローマ人の物語 21・22・23 危機と克服』 (新潮文庫)

Filed under: ローマ — 万年初心者 @ 06:00

一読した感想。

「つ、つまらねえ・・・・・。」

そんな読後感を持ったのはこのシリーズで初めて。

もちろん一定水準はクリアしているのだが、前巻までより面白さは相当落ちてる。

安定期に入った帝政時代という題材にも原因があるんでしょうが、率直に言って叙述自体の質もやや下がり気味という気がしてならなかった。

例えば、本書の前後あたりの巻では同表現の繰り返しが鬱陶しい程何度も表れて、編集者がきちんと仕事をしているのか疑わしく思える。

単行本を即買って精読するのは、確かこの巻で止めたはず。

腐してばかりですが、ただ、貴重な入門書であることには変わりありません。

本書ではネロ破滅後の内戦で、ガルバ、オト、ヴィテリウスの三皇帝が次々死を迎えてから、ヴェスパシアヌス帝による帝国の秩序再建、その二人の子ティトゥス、ドミティアヌスとそれを継いで五賢帝時代を拓くネルヴァの治世までが叙述範囲。

関連文献はタキトゥス『同時代史』ですが、これの通読は相当厳しいでしょう。

根気のある方は挑戦してみて下さい。

内容についてちょっと触れると、著者のヴェスパシアヌスへの評価はかなり高い。

これは他の本でも大体同様だが、短期間の治世の後病死したティトゥスにあっさりと触れた後、カリグラ・ネロと併せて古代から暴君扱いのドミティアヌスを意外なほど評価している。

ライン、ドナウ両河上流に挟まれた北方国境の防備を再構築したドミティアヌスの功績が称えられ、これは後の巻でも度々言及される。

『古代ローマ人名事典』の項でも以下のように書かれている。

伝統的にドミティアヌスは、ガイウス「カリグラ」やネロと並ぶ暴君として非難されている。しかし彼が暗愚な皇帝ではなかったことは、政治家と行政府の人選―そのなかには彼をあれほど手厳しく論難したタキトゥスや小プリニウスも含まれる―、ドナウ川沿岸地域における緊迫した軍事問題への身を挺しての精励、広範な建築事業を可能にした財政手腕に明らかである。・・・・・・陰気で冷酷、自己中心的で残忍な点でいやな人間という評価は今後も動かないにせよ、統治者としてのドミティアヌスは、凶暴で気まぐれなガイウスや愚劣なネロなどとの比較には値しない。

さて、このドミティアヌスが暗殺されて五賢帝時代直前のキリのいい所で終わりかなと思っていると、ネルヴァ帝の治世が最後の一章で片付けられてしまう。

治世が短いのもあるのだが、「ショート・リリーフ」という節があるように、五賢帝の一人目といっても、ネルヴァ自身はあまり積極的に評価されていない。

他の本だとさらに評価の低いものもある。

彼は、ネロに忠実に仕え反乱者の摘発に当たり、ドミティアヌス治下でも執政官などの重要な職務に就いていた。

再び『古代ローマ人名事典』によると、

明らかに彼は体制にきわめて忠実であった。彼がドミティアヌスの治世に追放を受けたという話は後代の願望がなせる作り話のように思われる。彼はそれほど尊敬すべき人物ではなかった。

と書かれていて、南川高志『ローマ五賢帝』(講談社現代新書)でもドミティアヌス派と反ドミティアヌス派の間で微妙なバランスを取りながら、慎重な政権運営をした人といった扱いであった。

なにやらイメージが崩された感じもするが、いややはり偉い人だったんだろうと思い直す気持ちもある。

最初につまらないと言ったわりに長々と書きましたが、やはりこの巻はあまり好きじゃないですね。

あくまで他の巻に比べれば、の話ですが。

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