万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年8月31日

有賀貞 編 『新版 概説アメリカ史』 (有斐閣)

Filed under: アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

主要国の各カテゴリを眺めてると、どうもアメリカが特に弱いような気がする(あとイギリスも)。

個人的にこの分野の基本テキストと考えているアンドレ・モロワ 『アメリカ史 上・下』 (新潮文庫)をしっかり読み込んで、全ての大統領の任期順と大体の業績を頭に入れれば、かなりの知識量にはなるが、通史がそれだけというのはやや心もとない。

そう考えていたところ、大学に入ったばかりの頃にこれを買ったのを思い出した。

確か最後まで通読したはずである。

しかし内容は全く記憶に無い。

以前にも書きましたが、こういうありきたりの教科書的な本を多く読んでもあまり充実感はない。

物語として面白くないことには読み進みにくいし、読んだ後、頭にも残らない。

人にも依るでしょうが、世界史のどんな分野に限らず、私はこの種の本はあまりお勧めしません。

その他のアメリカ通史というと、サムエル・モリソン『アメリカの歴史 全5巻』が十年ほど前、集英社で文庫化されたが、買おうかどうか迷ってるうちに品切れになりました。

立ち読みしたところ、どうも是非読みたいと思わせるものがもう一つ少なかった気がした。

ポール・ジョンソン『アメリカ人の歴史 全3巻』(共同通信社)は以前記事にした『現代史 上・下』の著者だけあって癖が有りすぎるという感想を持った。

最近上巻だけ文庫化されたロデリック・ナッシュ『人物アメリカ史』(講談社学術文庫)もどうもいまいち。

重要人物の伝記を積み重ねて通史を物語るという形式は面白いのだが、現代の視点からの当たり障りの無い史観でまとめられており、手堅いと言えばそうだが、個人的にはどうも斬新で感心させられる叙述は少ないような気がする。

古い本だが、チャールズ・ビーアド『アメリカ合衆国史』(岩波書店)はまあまあ良さそうだが、読むのに少々骨が折れる。

『新書アメリカ合衆国史 全3巻』(講談社現代新書)は内容が粗いように思われるし、文章が退屈。

各種世界史全集のアメリカ史該当巻も中公旧版『新大陸と太平洋』を始め、いろいろ出てますが、読書意欲を強くそそられるものはあまり無いように思える。

他にもいろいろあるでしょうが、今のところ自分の目で確認したのは以上です。

贅沢言って、あれこれケチつける暇があったら一冊でも多くの本を読めばいいのかもしれませんが。

何か新しいものを通読したら、また記事にします。

2007年8月29日

宮本信生 『カストロ』 (中公新書)

Filed under: ラテン・アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

カストロ、ゲバラの礼賛本など全く読みたくはないのだが、本書は元キューバ駐在大使の著者が共産圏崩壊後の1996年に、多くの点で批判しながらも基本的には擁護するというスタンスで書いた本なので、読んでみた。

なかなか良いです。

すごく面白いということもないが、基本的な史実を押さえながらわかりやすくキューバ現代史を叙述している。

偏りのない良質の入門書としてお勧めします。

2007年8月27日

黄仁宇 『中国マクロヒストリー』 (東方書店)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

タイトル通り、中国の国家・社会構造を巨視的に概観したもの。

初心者にはやや論旨が掴みにくいところもあるが、全く理解できないというほどでもない。

先に訳者あとがきを読んだらいいかもしれない。

著者は元国民党軍将校で、後にアメリカに移住。そこで1988年に書いた英文著書を翻訳したのがこれ。

堀敏一 『中国通史』 (講談社学術文庫)と似たタイプの本ですが、こちらは挫折せずに読み通せました。

内容はまあまあ。図書館で借りて気が向いたら買ってください。

2007年8月24日

『社会人のための世界史』 (東京法令出版)

Filed under: 教科書・年表・事典 — 万年初心者 @ 06:00

タイトルだけ見ると内容の薄い雑学系の本かと思うが、版形の大きな地図帳・史料集としての高校副読本に近い本。

これが意外にも実に良くできている。

世紀ごとの世界の概観を示した地図や、各地域の史的展開をわかりやすく記した表が、痒い所に手が届くといった感じで実に適切に掲げられている。

パラパラ読むだけで、盲点を衝かれたり、知識を確認できたりする。

書店で見かけて思わず衝動買いしてしまった。

高校向けの本の装丁を変えて一般向けに発売したのかなと思って、版元のHPを見たところ、歴史関係の本はこれくらいしか載っていなかった。

それでいてこの完成度は謎である。

今年の5月に出た本ですが、これはなかなかの良書です。

細かな地図や年表には欠けるので、以前記事にした吉川弘文館の『世界史年表・地図』などは別に必要でしょうが、本書も手元に置いておくと非常に便利だと思います。

2007年8月21日

ロン・サヤマナン 『タイの歴史』 (近藤出版社)

Filed under: 東南アジア — 万年初心者 @ 06:00

これも講談社旧版「世界の歴史」の中の『インドシナ文明の世界』で紹介されていた本。

全くの初心者が読むには少し厳しい部分もあるが、ごくオーソドックスな形式の通史なので貴重。

高校世界史ではラーマ・カムヘン王以外習うことのないスコータイ朝、アユタヤ朝の国王の系譜は暗記すればかなりの充実感がある。

ただし一度読んだだけで頭に入れるのはまず不可能で、メモ・ノート必須と思われます。

その他のタイ通史としては、ウッド『タイ国史』(冨山房)なんてのもありますが、翻訳が出たのが昭和16年ですから、いくらなんでも1977年刊のこちらの方がいいでしょう。

しかし本書も極めて手に入りにくいんですよねえ・・・・・。

これまで記事にした本の中では『現代中国革命史』『スペイン史概説』と並んで入手困難。

復刊も望み薄でしょうから、申し訳ありませんが気長に探して下さい。

2007年8月18日

鈴木孝 『ビルマという国』 (PHP研究所)

Filed under: 東南アジア — 万年初心者 @ 06:00

東南アジア全域の通史は各種世界史全集でかなり出てます。

そのうち講談社旧版の『アジアの多島海』と『インドシナ文明の世界』を早く文庫化してくれないかなあと思っているところですが、それとは別に各国別のオーソドックスな通史も欲しくなってくる。

しかし、そういった種類の本はなかなかありません。

本書は『インドシナ文明の世界』巻末の参考文献欄で紹介されているのを見て買ったもの。

元駐ビルマ大使の著者が1977年に書いた本。

それから連想される駐在中の四方山話などは後半三分の一ほどで、残りは簡略なビルマ通史が記されている。

これは意外な拾いものじゃないでしょうか。

もうちょっと前近代の部分を充実させて、物語性を増してもらえれば更に良かったのですが、類書が少ない中、かなり有益な本になっています。

中公新書で『物語ミャンマー(ビルマ)の歴史』が出るまで、ビルマ史の基本書としてはこれを使おうかと思います。

2007年8月14日

吉川忠夫 『劉裕』 (中公文庫)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

東晋の跡を受けた南朝宋の建国者の伝記。

生き生きとした筆致で、歴史小説のように面白く読める。

まず東晋の歴史の復習ができる。

忠臣王導の功による建国、軍閥桓温の専横と死、謝安による政権安定と淝水の戦いでの前秦・苻堅撃退、桓温の子桓玄の台頭、対立する劉牢之の自殺と桓玄の専制。

劉牢之の部下であった劉裕は桓玄を打倒し、東晋王朝の第一実力者にのし上がる。

氐系苻氏の前秦滅亡後、華北は鮮卑系慕容氏の南燕、鮮卑系拓跋氏の北魏、羌系姚氏の後秦、匈奴系赫連氏の夏などが割拠する混乱状態にあった。

劉裕は北伐を行い、山東の南燕を滅ぼし、さらに後秦をも滅亡させ、ごく一時的にではあるが、洛陽・長安を回復する。

その勢威をもって禅譲を行わせ、宋の武帝として即位するが、在位二年足らずで病没。

ちなみにかつて劉牢之の下で劉裕の同僚であった詩人の陶淵明は劉裕の簒奪に対して批判的な詩を残している。

本書は事前に予想していたよりはるかに良かった。

この複雑極まりなく難解な時代を整理するための貴重な手段となりうる本。

印象深い叙述で史実の流れがよく頭に残る。

初心者にとっては非常にありがたい。

同著者で、同じ南朝時代を扱った『侯景の乱始末記』(中公新書)が何かやたらと名著だ名著だと騒がれているようなので借りてみたところ、さほど面白いとも思わなかったのだが、本書の出来からするとやはり素晴らしい本なのかもしれない。

本書と併せて是非復刊してもらいたいです。

2007年8月10日

中屋健一 『ラテン・アメリカ史』 (中公新書)

Filed under: ラテン・アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

1964年刊。こちらもアメリカ史研究の長老格の人が書いた中南米史。

古い本ばかりで恐縮ですが、どうもそういった著作の方が私には合っているようです。

19世紀初頭の独立運動以後を叙述対象にしており、それ以前は省略されています。

比較的最近の増田義郎『物語ラテン・アメリカの歴史』(中公新書)とやや内容が重複するところもありますが、2冊とも読めばそれなりに得るところがあるでしょう。

冒頭は著者の中南米紀行と(本書刊行時点での)政治情勢の描写ですが、それはそれで面白いです。

ボリバル、サン・マルティンらが主導した独立運動の経過は比較的詳しくて良い。

中盤以降、独立達成後の各国の歴史を点描する章になりますが、新書版の厚さで多数の国の概略を記していくので、少々まとまりがないように感じる。

しかし細かな内容は無理に頭に入れようとせず、19世紀を通じて自由主義派と保守派の対立で多くの国で国内が混乱し、しばしば専制支配者が現れた中南米の歴史の概要を捉えられれば良いと割り切りましょう。

最後の20世紀を扱った章は、メキシコ・キューバ・ブラジル・アルゼンチンの歴史を重点的に叙述している。

これはこの地域での四ヶ国の重みを考えると理解できます。

個人的に非常に苦手な分野なので、この程度の薄い本でも結構役に立ちました。

各国の政権担当者名などの、やや詳しいデータをメモする機会があれば、かなり使える本のような気がします。

2007年8月7日

本間長世 『リンカーン』 (中公新書)

Filed under: アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

ホイーア 『リンカン』 (岩波新書)が初心者向けとしてはかなり難ありだったので、簡略な伝記を探していたのだが、本書を読みました。

これは非常にいいんじゃないでしょうか。

コンパクトな分量で読みやすい文章。説明も特にわかりにくいところもなく、平易な内容。

リンカーンは、その経歴において急進的奴隷制廃止論には常に距離を置き、大統領当選してからは連邦の政治的統一性維持を最優先に考え、南北戦争勃発後もそれを聖戦視することを避け、理想主義的熱狂に陥ることを自戒し、南部への過度の懲罰的措置を防ごうとした。

理想主義的民主主義者として神格化されたリンカーン像に異を唱え、彼の真の偉大さは実際的政治家、現実主義者としてのものであると強調している。

世界史上の有名人に関して、こういう誰でも簡単に読める優れた伝記がいつでも手に入るようにして欲しいものです。

1968年刊とやたら古い本ですが、今読んでも面白いし、著者はアメリカ研究ではかなりの大御所のはずですから、常時在庫してくれてもいいんじゃないかと思います。

2007年8月3日

仲井斌 『西ドイツの社会民主主義』 (岩波新書)

Filed under: ドイツ — 万年初心者 @ 06:00

戦後を中心にした、手軽で簡便なドイツ社会民主党史。

岩波でこのタイトルだと、「ナチズムの勝利を招いた似非社会主義の裏切り者」みたいな内容かと思うかもしれないが、本書は1979年刊なので、いくらなんでもそんな立場の本ではない。

戦後の社会民主党初代党首シューマッハーは、十数年間を強制収容所の中で過ごした不屈の反ナチ闘士であると同時に、ワイマール共和国へのドイツ共産党の破壊的態度を身をもって経験したがゆえに、ソ連共産主義に対する徹底した批判者でもあった。

東ドイツ地域の社会民主党が共産党に併合され社会主義統一党の一党独裁体制が固まっていくなかで、シューマッハーは西ドイツでの党の自主性を断固として守り、共産党を強く排撃する。

彼はアデナウアー政権の西方一辺倒の外交政策にも反対したが故に、政権を奪取するには至らなかったが、その死後社会民主党は1959年有名なバート・ゴーデスベルク綱領を採択し、ドグマ的マルクス主義と絶縁し、現実主義的な国民政党の形を整える。

1966年キージンガー首相の下、キリスト教民主同盟との大連立内閣に加わり、戦後初めて政権に参加する。

1969年にはついにブラントを首班とする社会民主党・自由民主党連立政権を成立させ、74年のシュミット政権と共に東方政策、デタント外交を展開する。

本書の最後は「緑の党」成立直前の環境保護運動にも多くの紙数が割かれている。

楽に読めて結構面白いです。

戦後西ドイツ政治史の入門書として使えます。

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