万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年6月17日

浅田實 『東インド会社』 (講談社現代新書)

Filed under: イギリス — 万年初心者 @ 06:00

最初、永積昭『オランダ東インド会社』(講談社学術文庫)を読もうと思ったのだが、やや煩瑣で私には程度が高い気がしたので、ごく簡略な本書を選んだ。

こちらはイギリスの東インド会社を主に扱った平易な通史。

1600年にイギリスの会社が、1602年にオランダの会社が設立されたというのは教科書レベルの知識だが、17世紀前半においてはアジア貿易においてオランダ会社が圧倒的優位を占めていた。

イギリス会社が一回もしくは数回の航海ごとに元本をも分配する当座的性格の組織だったのに対して、オランダ会社は株主の有限責任性と永続的会社組織によりイギリスの十倍以上の資本金を集めた、史上初の近代的株式会社として繁栄する。

当時の主要輸入品である胡椒、チョウジ(クローブ)、ニクズク(ナツメグ)などのスパイス貿易を支配したオランダは1623年アンボイナ事件でインドネシア方面からイギリス勢力を排除する。

その後ピューリタン革命を経て、1657年クロムウェルが東インド会社を永続的組織として改組する。元本・利益双方を分配する方式を止め、利益のみを株主に分ける本来の配当制を実施。また航海条令と英蘭戦争によって、オランダのアジア貿易支配を覆す試みが始まる。

復古王政期になると経済の高度成長に支えられ、イギリス会社も躍進を続けオランダを徐々に追い越していく。

この頃から輸入における香辛料の比重が下がり、インド綿織物製品(キャラコ)が多く輸入されるようになり、さらに18世紀になると茶が主要品となる。

第二次、第三次英蘭戦争でオランダを叩き潰したイギリス会社は大いに繁栄し、大株主兼会社総裁のジョサイア・チャイルドなどは今で言うインサイダー取引で巨万の富を得る。

名誉革命後、それに対して批判が集まり、1698年「新東インド会社」が設立される。

新旧両会社の対立と妥協の末、結局1709年両者が合併して「合同東インド会社」が成立。これが百数十年後解散に至るまで存続した会社の本体となる。

なお途中の2章で脱線が入り、東インド会社のライバルが出来かけた、18世紀イギリスのバブル経済崩壊とも言える「南海泡沫会社」事件が扱われる。

1757年プラッシーの戦いに勝利し、会社はベンガル・ビハール・オリッサの徴税権を取得する。これは名目上のムガル朝地方太守は存在するが、無力な年金受領者となって実質的統治は会社に握られるという奇妙な状態である。

以後会社はクライヴ、ヘースティングスなど優れた指導者の働きもあり、支配領域を拡大していき、植民地統治組織としての性格を強める。

それにつれて政府の会社に対する規制・監督・統制が徐々に強められていく。

またそもそもアジア貿易において輸出に関してはイギリスの主要産品である毛織物が売れず、銀が流出する一方だったのが、インドからの徴税を支払いに当てたり、産業革命によって大量生産された綿織物製品を輸出しインドのキャラコ産業を壊滅させ、後にはアヘンを輸出して賄うようになっていく。

1813年には会社の貿易独占権が(中国地域を除いて)廃止され、1833年には形骸化していた中国貿易独占権も廃止となり、遂に商業活動自体を停止する。

そして1857年セポイの反乱勃発の責任を問われ、翌年会社は解散され、インドは政府の直接統治下に入る。

以上高校教科書に出ているような史実も含めて、ごく平易に書かれており、非常に読みやすい。

驚くほど面白いという本でもないが、読んでも損はないです。

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