万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年6月7日

増田義郎 『インカ帝国探検記』 (中公文庫)

Filed under: ラテン・アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

フランシスコ・ピサロによるインカ帝国征服を叙述した本。

コンパクトにまとまっていながら、なおかつ内容は濃い。

インカ帝国史の概略からピサロの探検と遭遇、皇帝アタワルパを虜囚にした後の首都クスコ占領、インカの反乱と少人数ゆえのスペイン人の苦戦、征服者内部の対立と紛争およびインカ残存勢力との目まぐるしい妥協・対立、トゥパク・アマルを首長とするインカ勢力の最後の反乱とその鎮圧までが詳しく記述されている。

総合的に見て、これは非常に良いです。

史実の細かな経緯自体が興味深いだけでなく、評価のバランスも取れている。

スペイン人征服者の暴虐にももちろん触れているが、時にはそれと相反する事実も書き留めているし、インカ人を全く悪意の無い、無垢なユートピアに暮らしていた人々であるといった単純化された捉え方もしていない。

行間に侵略者への憎悪を漲らせて、終始糾弾口調で記された歴史はどうも読む気にならないので、個人的にはこのくらいの叙述がちょうど良かった。

本書のように淡々と史実を記した上で、結果としてスペイン人との遭遇は先住民にとって大きな悲劇をもたらしたと評価するのなら素直に受け入れられる。

同じ著者の『古代アステカ王国』(中公新書)も読みたくなった。ただ『メキシコ革命』(中公新書)はパラパラ見たところ、是非通読したいとは思えない出来でした。

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