万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年6月3日

高山博 『中世シチリア王国』 (講談社現代新書)

Filed under: イタリア — 万年初心者 @ 06:00

ノルマンディー、ノヴゴロド、イングランドとともに第二次民族大移動の中でノルマン人が勢力を得た地域である南イタリア・シチリア王国を扱った本。

この両シチリア王国はラテン・カトリック、ビザンツ・東方正教、アラブ・イスラムの三文明が混交した特異な地域であるとともに、中世においては異例なほど官僚制が整備され中央集権化が進んでいた国として一般には著名なようだ。

ノルマンディー出身のオートヴィル家が本書の主役であり、まず稀代の奸雄ロベルトゥス・グイスカルドゥス(ロベール・ギスカール)が南イタリアに強大な基盤を築く。

叙任権闘争の最中の教皇グレゴリウス7世と提携し巧みな交渉によって自らの勢力を認めさせたあと、ビザンツ帝国征服をも企み、バルカン西部の帝国領を荒らしまわる。

その子のボヘモンドゥス(ボヘモン)はゴドフロワ・ド・ブイヨン、トゥールーズ伯レーモンと並んで第一回十字軍の主要参加者で初代アンティオキア公となる。

(ギスカール、ボヘモン父子についてはギボン『ローマ帝国衰亡史』9巻に詳しい記述あり。)

ギスカール死後、ボヘモンと異母兄弟の相続争いなどがあり、ノルマン人勢力の指導権はギスカールの弟ロゲリウス(ルッジェーロ)1世に移る。

彼は10世紀以後ビザンツからイスラム支配下になっていたシチリア島を内紛を利用して奪取し、首都パレルモを中心とした豊かで強力な領地となすことに成功。

後を継いだ子のルッジェーロ2世は半島部の領域も併せ、王号を手に入れ初代シチリア国王に即位するとともに北アフリカにまで遠征を行い、トリポリ・チュニスなどを奪取し、広大な領域を治める君主として地中海に君臨する。

ルッジェーロ2世の子ウィレルムス(グリエルモ)1世、孫のウィレルムス2世の治世は続発する反乱に悩まされながらも王国の統一を保持し、独特の文化と広範な貿易で繁栄を維持する(ただし北アフリカの領土はムワッヒド朝に奪われる)。

だがウィレルムス2世死後継承争いが起こり、結局ウィレルムス1世の妹で2世にとって叔母にあたるコンスタンティアが神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世(フリードリヒ1世バルバロッサの子)と結婚していた縁で、シチリアはドイツ・シュタウフェン家の統治下に入ることとなる。

ハインリヒとコンスタンティアの息子である皇帝フリードリヒ2世の治世で本書は幕を閉じる。

紙数の都合もあっただろうが、できればフリードリヒ死後のシュタウフェン朝断絶、フランス・アンジュー家およびスペイン・アラゴン家の統治にまで筆を進めてもらいたかった。

それが残念ではあるが、新書版の啓蒙書としてはかなり良い部類に入ると思う。

教科書でごく簡略に触れられているだけの史実の細部が興味深く記され、断片的な知識が組み合わさって一つの物語が成り立っていく過程の快感が味わえる。

私にとってはそれが歴史を学ぶ醍醐味である。

本書はものすごく面白いわけではないが、以上の楽しみを平均以上で与えてくれる良書と言えます。

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