万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年6月30日

三笠宮崇仁親王 『ここに歴史はじまる (大世界史1)』 (文芸春秋)

Filed under: オリエント — 万年初心者 @ 06:00

文春「大世界史」シリーズの古代オリエント史。

ごく平易な作りで読みやすい。

私のような初心者向き。

ただ紙数が少なめなので河出文庫版『古代オリエント』と比べるとやや物足りなく感じてしまう。

教科書で大まかな史実を掴んだ後読む本としては、河出版よりこちらを先に読んだ方がいいかもしれない。

なお本書は『文明のあけぼの』と改題されて集英社から2002年に再版されている。

まだ新刊として手に入るのは有難いのですが、値段はかなり高め。

他の「大世界史」シリーズのように講談社学術文庫に入ればより良かったんですが。

2007年6月29日

川又一英 『イヴァン雷帝』 (新潮社)

Filed under: ロシア — 万年初心者 @ 06:00

トロワイヤ『イヴァン雷帝』(中公文庫)の記事で「いつか通読しよう」と書いたこれを読む機会があった。

なかなか良いです。

治世全般に亘って平易な表現でわかりやすく叙述されている。

イヴァン3世の子ヴァシリー3世の嫡子として生まれ、幼年で即位、成人後はカザン・アストラハン両汗国を征服し、最晩年にはイェルマークを派遣しシビル汗国も滅ぼすものの、バルト海への出口を求めてリトアニア・ポーランド王国およびスウェーデンと戦ったリヴォニア戦争では苦杯を舐め、オスマン・トルコを後ろ盾にしたクリミア汗国には一時モスクワにまで攻め込まれ首都が灰燼に帰す。

外交面での苦境を脱するため、白海沿岸にイギリス船が漂着したのを期に、英国との同盟締結を計り、エリザベス1世に結婚を申し込むが拒否される。

内政面では名門貴族の勢力を削ぎ、忠実な士族層(新参の勤務貴族)に土地を分与し、中央集権化を徹底させる。(ちなみにイヴァンの皇妃アナスタシアの実家ザハーリン家もそうした新参貴族で、この一族が後にロマノフ家と改名し、新たな王朝を築くことになる。)

記述テーマによって時系列が前後することが多く、そこだけがやや欠点と言えるが、全体的には瑕疵に過ぎないでしょう。

当時のロシアの基準からしても極端な専制君主制を志向し、親衛隊オプリチニキを手足として、大貴族を多数殺害しノヴゴロド市を壊滅させた暴君としての側面と、神を畏れ自らの使命を確信し晩年にはかつての弾圧政策の犠牲者の名誉回復を行った信心深い側面の両方をバランスよく記述している。

著者はあとがきでトロワイヤの『イヴァン雷帝』を「大仰な俗流小説表現が作品を文学から遠いものにしている」と評しているが、全く同感です。

トロワイヤの本より、こちらをお勧めします。

2007年6月28日

増田義郎 『古代アステカ王国』 (中公新書)

Filed under: ラテン・アメリカ — 万年初心者 @ 06:00

同じ著者の『インカ帝国探検記』の姉妹編。

コルテスによるアステカ王国征服を叙述した作品。

上記の本と同じく非常に良い。

特異な史実の展開が極めて面白いだけでなく、歴史評価についてもバランスが取れている。

スペイン人征服者の狡猾・残忍・強欲・独善に触れる一方、必ずしもそうとは言えない一面にも言及している。

またアステカ族についても、「無垢な犠牲者」という面だけで捉えてはいない。

孤立した文明圏で暮らしてきたがゆえにやむを得ない側面があったとはいえ、彼らが奇怪で恐ろしい宗教観・宇宙観を持っており、それゆえ残忍な人身御供の風習を続けていたこと、領土拡張や貢納要求のためでなく生贄として虐殺するための捕虜を得るため近隣部族に戦争をしかけ、そのため大きな恨みをかっていたことなどにも触れている。

(それら近隣部族はコルテスの征服行為においてスペイン人の有力な同盟者となる。)

話の展開が非常に面白い。初心者向けの本としては最高。

中公新書の創刊まもない1963年初版という古さだが、今読んでも極めて興味深い本。

これも重版再開して常時手に入れられるようにしてもらいたいもんです。

2007年6月27日

尾鍋輝彦 『最高の議会人 グラッドストン』 (清水書院)

Filed under: イギリス — 万年初心者 @ 06:00

この清水新書というシリーズは存在自体は知っていたのだが、「何かパッとしねえなあ」(失礼)と思えたのでこれまで手に取ったことは無かった。

しかしたまたま機会があったので、類書の少なそうなこれを読んでみた。

19世紀後半の英国で四度に亘って内閣を組織した大政治家の伝記。

ライバルのディズレーリと、ヴィクトリア女王に関してもかなりの紙数が費やされている。

内容はまあまあ。もうちょっと整理して書いてくれるとわかりやすかったかなといったところ。

一般的なイメージを崩されるような記述もあり、なかなか興味深い面もある。

是非にとは言いませんが、一度手にとってみてください。

2007年6月26日

岸本通夫 他 『古代オリエント (世界の歴史2)』 (河出文庫)

Filed under: オリエント — 万年初心者 @ 06:00

読んでない本も多いとはいえ、これまで曲りなりにも400冊余り紹介してきて、オリエント史が専著でゼロとは酷いというか何というか・・・・・。

緊急補強のつもりで、気軽に手に入るこれを読みました。

なかなか良いです。

教科書の鶏ガラみたいな枠組みに、様々な史実や人物像やイメージを肉付けしていく上で、非常に有益。

文章が読みやすく、遅読もいいとこの私でもかなりのスピードで通読できた。

初心者向け入門書としてはかなり高得点。

オリエント史については高校教科書レベルの知識をうろ覚えしているだけという、私のような人間に適した本です。

2007年6月25日

陳舜臣 『中国傑物伝』 (中公文庫)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

以前、この人の本はあまり好きではないと書いたが、これはまあまあ良かった。

ややマイナーな人物を含む中国史伝記集。

歴史読物として良質な部類に入ると思う。

特に前漢の宣帝の話などは面白かった。

暇があればどうぞ。

2007年6月24日

田中克彦 『草原の革命家たち』 (中公新書)

Filed under: 中央アジア — 万年初心者 @ 06:00

20世紀前半のモンゴル現代史。

駄目。異様に読みにくい。

初心者向きでは全く無い。

この分野もなかなかいい本が無いですね。

マイナー分野だからしょうがないんでしょうが。

同じ中公新書の磯野富士子『モンゴル革命』も基本書として手元に置きたいと思えるようなものではなかった。

穏当な歴史解釈で詳しい史実がわかりやすく叙述されたモンゴル史の本が欲しいところです。

(なお、これ以上カテゴリを作るのもアレなので、本書は「中国」カテゴリに入れました。)

(07年9月14日追記 「中国」からは外して、「中央アジア」のカテゴリに入れることにしました。)

2007年6月23日

三田村泰助 『宦官』 (中公文庫)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

宮崎市定氏の『科挙』と並んで中公文庫(両方とも元は中公新書だったのを文庫化)の中での中国社会史啓蒙書の超ロングセラー。

宦官制度の概略を記した後、その害毒が極めて大きかった漢・唐・明の三王朝について大まかな史実を叙述していく構成。

定評ある本だけに内容は手堅い。

すごく面白いということはないが、通読しても損は無い。

お勧めします。

2007年6月22日

ルソー 『人間不平等起源論』 (岩波文庫)

Filed under: 思想・哲学 — 万年初心者 @ 06:00

また来ました、そもそも私が紹介する資格のない本です。

何卒ご容赦を。

本書についても覚えていることと言えば、文明社会の弊害の原因を私有財産制に求めるようなルソーの記述に、ヴォルテールが激昂して「これこそ貧者の暴力による富者の収奪を正当化するならず者の哲学だ」と書き付けたとか、ルソーへの手紙に「あなたの本を読むと、人は四本足で歩きたくなります」と記したとか、そんなことだけ。

もう十数年前に読んだきりですが、再読しようとは思いませんねえ。

あとルソーの本では岩波文庫『エミール』の上巻だけ読みましたが、何だかよくわからないまま適当に目を通しただけでした。

もっと平易な入門書として桑原武夫『ルソー』(岩波新書)はまあ読んでおいてもよかったと思いますが、それも強くお勧めはしません。

2007年6月21日

ゴロウニン 『ロシア士官の見た徳川日本 続・日本俘虜実記』 (講談社学術文庫)

Filed under: 近代日本 — 万年初心者 @ 06:00

幕末明治の日本を訪れた欧米人の著書というのも、相当の数があって到底読みきれないほどだが、ごく粗く飛ばし読みした数点を除いて比較的しっかり読んだと言えるのは、恥ずかしながらこれだけである。

前半はレザノフの択捉攻撃の報復として日本に抑留されたゴロウニンによる手記。

後半はゴロウニン救出のために日本側と交渉しその目的を達した副長リコルドの回顧録。

この二者と高田屋嘉兵衛の話は司馬遼太郎の『菜の花の沖』で有名でしょう。(私は未読ですが)。

本書自体が非常に面白いものですので、機会があれば是非どうぞ。

2007年6月20日

中西輝政 『大英帝国衰亡史』 (PHP文庫)

Filed under: イギリス — 万年初心者 @ 06:00

この人は、高坂正堯氏の弟子にしてはエキセントリックで煽動家じみた言動が目立ち、あまり好きな著者ではないのだが、本書は少々話題になった本だし文庫化されたのを期に買ってみた。

だがあまり面白いとも思わず、三分の一くらい読んだところで止める。

もう一度読もうという気も無いではないが、たとえ通読しても同じ歴史評論である高坂氏の『文明が衰亡するとき』(新潮社)などとは天と地ほどの差を感じると思う。

あまり積極的にはお勧めしません。

2007年6月19日

松谷健二 『ヴァンダル興亡史』 (中公文庫)

Filed under: ローマ — 万年初心者 @ 06:00

古代末期のゲルマン国家についての歴史物語。

表現が平易で読みやすい文章であり、歴史好きの一般読者向けに適切なレベルと性向でなかなか良い。

エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史』の5、6巻あたりでも本書の内容は詳しく語られていますが、そう気軽に再読できる本ではないので、こういう本で知識の確認をするのもよいでしょう。

ギボンを読んだ印象では、このヴァンダル族という部族についてはあんまりいいイメージが無い。

同じくローマを占領・略奪したものの、のちに西帝国の同盟者となり、ともにアッティラと戦った西ゴート族や、ヨーロッパの古代から初期中世への移行を育んだフランク族に比べると、破壊的役割しか果たさなかった本当の蛮族といった感じ。

その王であるゲイゼリック(ガイセリック)についても、アラリック、クローヴィス、テオドリック大王など他のゲルマンの諸君主と比較すれば、粗暴・狡猾・残忍といった印象が強い。

著者の松谷氏によれば、そのようなイメージにはかなりの誇張と歪みがあるそうなのだが、本書を読了した上でも、私はやはりあまり好感を抱くことはできなかった。

しかし古典古代末期についての歴史モノとしてはかなり面白い。

この辺の歴史はかつてギボンを読んで胸躍らせたはずなのだが、ガイセリック以後のヴァンダル王の系譜などはまるっきり忘れていた。

さらにアヴィトゥスやら、マイオリアヌス(マヨリアヌス)やら、アンテミウスやらの西ローマ末期の皇帝についても名前をうろ覚えしているだけで、即位順や事績についてはほとんど頭に入っていなかった。

『衰亡史』を読み進めつつ、巻末の皇帝在位表も参照してかなり覚えたはずだったのだが、自分の記憶力の悪さを改めて思い知らされ、少々落ち込む。

それはともかく、ガイセリックに率いられスペインからアフリカに渡り、その地で広大な領土を得て建国し、東西両帝国・スペインの西ゴート・イタリアの東ゴートなどとの複雑な外交と抗争を経て、最終的に東帝国のユスティニアヌス1世が派遣した名将ベリサリウス率いる軍によって滅ぼされるまでのヴァンダル史が興味深く記されている。

初心者にもお勧めの良書。同じ著者で『東ゴート興亡史』『カルタゴ興亡史』も中公文庫から出ているので、それらも手にとってみると良いでしょう。

2007年6月18日

植村清二 『万里の長城 中国小史』 (中公文庫)

Filed under: 中国 — 万年初心者 @ 06:00

著者は戦前の旧制高校での名教師として有名だったらしいが、私には良さがわからない。

本書もごく平凡な通史としか思えず、退屈に感じて最後まで読まなかった。

再読したら印象が変わるのかもしれないが、今のところ強いて読み返す気になれない。

機会があればどうぞとだけ言っておきます。

2007年6月17日

浅田實 『東インド会社』 (講談社現代新書)

Filed under: イギリス — 万年初心者 @ 06:00

最初、永積昭『オランダ東インド会社』(講談社学術文庫)を読もうと思ったのだが、やや煩瑣で私には程度が高い気がしたので、ごく簡略な本書を選んだ。

こちらはイギリスの東インド会社を主に扱った平易な通史。

1600年にイギリスの会社が、1602年にオランダの会社が設立されたというのは教科書レベルの知識だが、17世紀前半においてはアジア貿易においてオランダ会社が圧倒的優位を占めていた。

イギリス会社が一回もしくは数回の航海ごとに元本をも分配する当座的性格の組織だったのに対して、オランダ会社は株主の有限責任性と永続的会社組織によりイギリスの十倍以上の資本金を集めた、史上初の近代的株式会社として繁栄する。

当時の主要輸入品である胡椒、チョウジ(クローブ)、ニクズク(ナツメグ)などのスパイス貿易を支配したオランダは1623年アンボイナ事件でインドネシア方面からイギリス勢力を排除する。

その後ピューリタン革命を経て、1657年クロムウェルが東インド会社を永続的組織として改組する。元本・利益双方を分配する方式を止め、利益のみを株主に分ける本来の配当制を実施。また航海条令と英蘭戦争によって、オランダのアジア貿易支配を覆す試みが始まる。

復古王政期になると経済の高度成長に支えられ、イギリス会社も躍進を続けオランダを徐々に追い越していく。

この頃から輸入における香辛料の比重が下がり、インド綿織物製品(キャラコ)が多く輸入されるようになり、さらに18世紀になると茶が主要品となる。

第二次、第三次英蘭戦争でオランダを叩き潰したイギリス会社は大いに繁栄し、大株主兼会社総裁のジョサイア・チャイルドなどは今で言うインサイダー取引で巨万の富を得る。

名誉革命後、それに対して批判が集まり、1698年「新東インド会社」が設立される。

新旧両会社の対立と妥協の末、結局1709年両者が合併して「合同東インド会社」が成立。これが百数十年後解散に至るまで存続した会社の本体となる。

なお途中の2章で脱線が入り、東インド会社のライバルが出来かけた、18世紀イギリスのバブル経済崩壊とも言える「南海泡沫会社」事件が扱われる。

1757年プラッシーの戦いに勝利し、会社はベンガル・ビハール・オリッサの徴税権を取得する。これは名目上のムガル朝地方太守は存在するが、無力な年金受領者となって実質的統治は会社に握られるという奇妙な状態である。

以後会社はクライヴ、ヘースティングスなど優れた指導者の働きもあり、支配領域を拡大していき、植民地統治組織としての性格を強める。

それにつれて政府の会社に対する規制・監督・統制が徐々に強められていく。

またそもそもアジア貿易において輸出に関してはイギリスの主要産品である毛織物が売れず、銀が流出する一方だったのが、インドからの徴税を支払いに当てたり、産業革命によって大量生産された綿織物製品を輸出しインドのキャラコ産業を壊滅させ、後にはアヘンを輸出して賄うようになっていく。

1813年には会社の貿易独占権が(中国地域を除いて)廃止され、1833年には形骸化していた中国貿易独占権も廃止となり、遂に商業活動自体を停止する。

そして1857年セポイの反乱勃発の責任を問われ、翌年会社は解散され、インドは政府の直接統治下に入る。

以上高校教科書に出ているような史実も含めて、ごく平易に書かれており、非常に読みやすい。

驚くほど面白いという本でもないが、読んでも損はないです。

2007年6月16日

フランシス・ベーコン 『ノヴム・オルガヌム』 (岩波文庫)

Filed under: 思想・哲学 — 万年初心者 @ 06:00

当ブログではネタに詰まると忘れたころにやってくる、この種の古典的著作。

いつもの通り、以前一応読みましたということ以外書くことが無いです。

まあ高校の倫理の時間に習った「洞窟のイドラ」とか「市場のイドラ」とかの事項について、ああこれがそうかと確認できるくらいには読めました。

これがデカルト『方法序説・情念論』(中公文庫)になると本当に字面を追うのが精一杯になった。

私の頭ではこういう本を読んで面白いと感じる能力が無いです。

残念ではありますが、まあ無理して読んでも身に付かないでしょうし、しょうがないですね。

2007年6月15日

吉田茂 『回想十年 全4巻』 (中公文庫)

Filed under: 近代日本 — 万年初心者 @ 06:00

前日の記事で、日本の外交官の著書としてなぜこれを挙げないのかと不思議に思われた方もおられるかもしれない。

実は私自身1巻しか読んでおらず、あんまり積極的にはお勧めしたくない。

高坂正堯『宰相吉田茂』(中央公論社)を読んで以来、本書も是非読みたいと思っていたのだが、古書店でもなかなか見つからず、あっても極めて高価だったので買えなかった。

そのうちに中公文庫に収録され、「さすが中公の選択はずば抜けて素晴らしい」と感激して読み始めたのだが、どうも面白くない。

何というか、うまく言えないが密度が薄いというか、読んでもしっかりと史実が頭に入ってくるような本ではない気がする。

ただしこれはあくまで私の感想ですので、割り引いてお受け取り下さい。

皆様には図書館での内容ご確認をお勧め致します。

(ちなみに猪木正道『評伝吉田茂 全4巻』(ちくま学芸文庫)はいつものパターンで買ったままほとんど読まないうちに古本屋行きになりました。よってこれに関しても何も言えません。機会があればお手に取って下さいというだけです。)

2007年6月14日

重光葵 『昭和の動乱 上・下』 (中公文庫)

Filed under: 近代日本 — 万年初心者 @ 06:00

日本外交の系譜を陸奥幣原来栖石射と辿ってきましたが、今度は重光の番です。

と言っても個人的体験に引き付けた回想録という性質は希薄で、ごく一般的な概説的史書の体裁。

満州事変勃発から戦艦ミズーリ艦上での降伏文書調印までの昭和史。

回顧録としては予想外れなのですが、昭和外交史概説としては非常に有益。

文章が極めて読みやすく、日本の軍閥勢力の消長、ヨーロッパとアジアの情勢の絡み合い、当時の為政者が置かれていた状況と為した決断、およびその後の出来事との因果関係が初心者にもわかりやすく叙述されている。

また基本的に内閣別の章立てになっており、日本内政の勉強にもなる。

これは良い。

ありきたりの退屈な日本外交史の教科書を読むくらいなら、本書を読んだ方が遥かにいい。

(なお同じような意味でお勧めは野田宣雄『ヒトラーの時代 上・下』(講談社学術文庫)。各国の指導者がどんな意図から何を政策決定の基準にしたのかが明快に説明されており、教科書で大まかな史実を把握しているだけの人間[つまり私]が読むと目から鱗が落ちます。)

未読の方には強くお勧めします。

さて、外交官の回顧録であと読むべきなのは東郷茂徳『時代の一面』(中公文庫)ですかね。

2007年6月13日

望田幸男 『ナチス追及』 (講談社現代新書)

Filed under: ドイツ — 万年初心者 @ 06:00

楽に読めたが、あまり面白くなかった。

内容的には平凡。

特筆すべき点は無し。

興味のある方だけどうぞ。

2007年6月12日

カント 『永遠平和のために』 (岩波文庫)

Filed under: 国際関係・外交, 思想・哲学 — 万年初心者 @ 06:00

カント哲学などは私の理解可能範囲を遥かに超えるものなので全く読めないのだが、これは高坂正堯『国際政治』(中公新書)の参考文献でもあるので、国際政治学の古典として読んだ。

この手の本にしては比較的楽に読めます。

特にカントが平和的国家の条件として挙げる「共和政体」を、民主政とは厳密に区別している点が非常に示唆的で面白かった。

世界史初学者にとって必読とは到底言えませんが、それなりに興味深い本ですので機会があればどうぞ。

(以下『林健太郎著作集 第3巻 ドイツの歴史と文化』「ドイツ市民精神」より)

・・・・同様の思想を、彼[カント]は『永遠平和のために』・・・・においては「各国家における市民的憲法は共和的ならざるべからず」なる言葉を以て表わしている。しかしながら、このような彼の言葉から直ちに彼を普通の意味における「共和主義者」と考えることは全く正しくない。

即ち彼によれば、共和制とは決して国家の最高権力を有する人員の数によって決定されるものではなくて全くその「統治の形式」によって定まるものであり「共和政体とは執行権を立法権より分離する所の国家原理」に外ならないのである。而して国家の支配者が「君主であるか貴族であるか又は全人民即ち民主的連合であるかはどうでもよい」(『法律哲学』)のであるが、しかも彼は所謂民主政治を、多数の者が少数の者を圧迫し、乃至は全員ならぬ全員が議決し得るが故に専制政治に外ならないとなし(『永遠平和のために』)更には「人間は一つの動物であって、それは同種族に属する他の者の中に住む時は一箇の君主を必要とする」(『一般歴史考』)と言っている。

そして又「実践的意図においては、最高権力の根元はこれに従属する人民にとって探究すべからざるもの」であって、「国家における支配者は臣民に対して権利のみを有して何等の(強制的)義務を負わない。」あるいは「人民にとっては決して暴動の権利はなく、ましてや個別的人格者(王)としての彼に対してその権力の誤用を口実としてなす彼の人格あるいはむしろ彼の生命に対する冒瀆の権利の如きは全然存しない。」あるいは又「(誤った)国家組織の変更は時には必要とされるであろうが―――それはただ統治者自身によって改革を通じて遂行され得るものであって、人民によって従って革命を通じて遂行され得ない」という見解も亦、同じ『法律哲学』の中で彼が固く持するところである。

(このように立憲君主主義と啓蒙専制主義の支持者であったはずのカントは、ルイ16世処刑とジャコバン恐怖政治によってドイツの革命同情者のほとんどがその反対者に変わったときにおいても革命支持を基本的には止めなかった。それについて林氏は「これは彼自身の市民性が如何に強烈であったかを物語ると同時に、又彼の学説自身の弱さを示すものと言い得るであろう」と記している。)

2007年6月11日

アンドレ・クロー 『スレイマン大帝とその時代』 (法政大学出版局)

Filed under: イスラム・中東 — 万年初心者 @ 06:00

これも外国人著者の世界史本の翻訳なので有難がるという間違った考えから買った本。

全く読めないというわけでもなかったが、やはり初心者には詳細すぎる。

基礎がしっかり身に付いた人でないと役に立たない。

これを読む前にオスマン帝国に関する啓蒙書をいくつか読むべき。

あまりお勧めしません。

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