万年初心者のための世界史ブックガイド

2007年5月24日

菊池良生 『ハプスブルクをつくった男』 (講談社現代新書)

Filed under: ドイツ — 万年初心者 @ 06:00

1273年ハプスブルク家のルドルフ1世の即位によって神聖ローマ帝国の大空位時代が終了するというのはギリギリ高校世界史の範囲内だが、それから即、同家による世襲が始まったのではなく、安定して帝位が世襲されるようになるのは15世紀中盤以降である。

本書はその狭間の時代のうち特に14世紀に焦点を絞って当時のドイツの政治情勢を描き出したもの。

これは良い。非常に良い。対象となる時代が限られているため記述は詳細で非常に興味深い。それと以前同じ菊池氏の『神聖ローマ帝国』『戦うハプスブルク家』(これらも共に講談社現代新書)を読んだ時にも感じたことだが、この人は歴史の素人への読ませ方を心得ている。新書版にしては内容が非常に濃く読んでいて面白い。

まずボヘミヤ王オタカル2世を破ってオーストリアを奪いハプスブルク家の本拠をスイスから同地に移す基礎を固めた英主ルドルフ1世死後、ナッサウ家アドルフの短期間の治世を経て、ルドルフの子アルプレヒト1世が即位するも、自らの甥に殺害されハプスブルク家は帝位を失う。

以後ドイツはオーストリアを統治するハプスブルク家、オタカル2世死後土着のプシェミスル朝が断絶したボヘミヤを手に入れたルクセンブルク家、バイエルンの統治者ヴィッテルスバッハ家の三つ巴の勢力が相争う舞台となる。

主にヴィッテルスバッハ朝のルートヴィヒ4世とルクセンブルク朝のカール4世という二人の皇帝とハプスブルク家のアルプレヒト2世(賢公・同1世の子)とその子ルドルフ4世(建設公・カール4世の女婿となる)の二人のオーストリア公の複雑な抗争と連携の過程が巧みに叙述される。

カール4世が有名な金印勅書を発布した背景や細かな経緯・内容もよくわかる。

ブランデンブルク辺境伯領の統治者の変遷などの盲点になりやすい知識も得られる。(同地はまずアスカーニア家支配からヴィッテルスバッハ家→ルクセンブルク家を経て、ニュルンベルク城伯だったホーエンツォレルン家統治に移る。金印勅書で選帝侯になった時点ではヴィッテルスバッハ家領有。)

最初はやや取っ付きにくいかもしれないが、読み進めていくにつれてすごく面白くなってくる。初心者向け入門書としてはかなりの名著。是非お勧めします。

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